ゴーストライターは貧乏? いま原稿料を明らかに吉田典史の時事日想(2/4 ページ)

» 2010年05月28日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

ゴーストライターの世界にも“格差”

 率直なところ、ゴーストライターの多くは手元にさしたるお金がない。中小出版社の支払い時期は遅いので、生活が一段と苦しくなる。おのずと、主要出版社と仕事をしようとする。

 だが、主要出版社の編集者は優秀なゴーストライターを5〜10人は確保している。これだけそろえれば、一定のペースでビジネス書が作れる。いまは、1人の編集者が年間で12冊〜20冊前後の本を作ることが求められているという。私の知り合いに最高で年間27冊の編集者がいるが、どこまで原稿の中身を確認できているのか疑わしい。

 経営者、芸能人、政治家、コンサルタント、学者などの「素人」が本当に書いたら、締め切りを守ることは難しいだろう。原稿は当然、前回、説明したような「商業用日本語」で書かれてあることが前提となる。素人が書いたらその可能性は相当に低い。おのずと、年間12冊〜20冊のペースが破たんする。編集者はそれを恐れているので、ゴーストライターを使い続けるのだ。

 新規参入しようとするライターからすると、主要出版社のハードルは高い。いったんその枠に入っても、し烈な競争が待ち受けている。そこで負けると、中小出版社と仕事をしていかざるを得ない。ここにも、メディアでは報じられない“格差”があるのだ。

 なお、この買い取り方式は出版社が1冊分の原稿を「買い取る」ので、それが本になり大ベストセラーになったとしても、ライターはさらに原稿料を請求できない。その場合の出版社の言い分は、「支払済み」ということだ。

アンフェアな印税方式

 (2)の印税方式であるが、まず次の公式を紹介する。最近は、この方法が多いので詳しく解説する。

 定価×部数×印税率=原稿料

 この式に、ある本を当てはめて計算してみる。定価が1500円、初版部数が6000部、印税が10%とすると、以下のようになる。

 定価(1500円)×部数(6000部)×印税(10%)=90万円

 著者が本当に自分で書いているならば、この90万円がそのまま支払われる。ただし、源泉徴収をするので10%を差し引いて、実際は81万円。しかし、ビジネス書の多くはゴーストライターが書いている。そこで著者とライターの双方で“山分け”となる。

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