そのときの基準が、印税率。通常、10%のうち、著者が7〜8%、ライターが2〜3%のパターンが多い。ごく一部に例外もある。ある著者は「フェアでありたい。5%:5%にしよう」と言った。私もこの意見に賛成で、いまは政府の審議会委員として活躍するこの人に心から敬意を表したい。
その一方で、コンプレックスの塊のような著者は、執拗(しつよう)に7〜8%にこだわる。いずれにしろ編集者は双方を合わせて、10%にする。ただし、一部の出版社は印税率を7〜8%にまで落としている。この場合も、ライターは2〜3%。ここまで落ちると、書き手からすると厳しいの極みである。
さて、これでゴーストライターが得るお金を前述の本を例に計算してみよう。印税率は、3%とする。
定価(1500円)×部数(6000部)×印税(3%)=27万円
著者はこの場合7%となるので、63万円を受け取る。
ライターが得るこの27万円という数字をどう見るか。1カ月〜2カ月かけて、著者に取材(インタビューを計10時間ほど)をする。その後、2カ月ほどかけて200ページを書き終える。
今度は、著者がその原稿にあたかも自分が書いたかのように補筆する。観察していると、多くの著者が作家気取りである。実は、その大半が日本語としてめちゃくちゃだ。主要出版社Sの副編集長いわく、「読んでいると、気が狂いそうになる」。この補筆の期間が約3週間〜2カ月。さらに、出版社で1〜2カ月をかけて印刷や製本作業をする。
本が発売されるまでの間、ライターに収入はない。スタートして半年以上が経ち忘れたころに、ようやく27万円が入る。もちろん、これでは生活できない。だから、ライターは男が少なく、女性が多い。しかも、主婦が目立つ。男で家族を養う場合は、年間にゴースト本を少なくとも5冊は書かないと生きていけない。当然、ほかに雑誌やWebサイトでも書きまくる必要がある。経験論でいえば、この生活を続けるのは厳しい。
ただし、前述の27万円では到底、話にならない。そこで主要出版社と中小出版社の一部は、これに「原稿料」を加算する。多いときは60万円、少ないときは30万円。
先ほど述べたケース(定価1500円×部数6000部×印税3%=27万円)に例えば50万円を加えて、計77万円となる。ただし、手取りはここから源泉徴収の分を引いた額となる。
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