“事業仕分け”からベストな取引のあり方を考える(2/2 ページ)

» 2010年06月16日 08時00分 公開
[中ノ森清訓,INSIGHT NOW!]
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競争的に事業主体を選定する

 外部についても、専門業者に任せればいいという話ではなく、あまたある専門業者の中で、最善の業者に任せなければいけません。そのための方策の1つとして、雪センターの仕分けでもそうでしたが、「外部への委託については、競争的に委託先を決定すべき」と判定されたものが非常に多くあります。内部で行う、外部で行うに関らず、その仕事が既得権益になってしまうと、創意工夫が生まれず、業務の改善・革新が進みません。

 「外部委託は競争で決定」というのは当たり前と言えば当たり前のことなのですが、なぜ事業仕分けでこれだけボロボロと「委託先を競争的に選定」との指摘がなされるのでしょうか? それは、取引先を競争的に選定するというのは非常に手間が掛かるからです。取引先を競争させるというのは、単純にただ相見積を取ればよいという話ではありません。

 例えば、そもそも取引先を競争させるのは、最善の事業主体を選ぶのが目的なので、競争の中に最善の事業主体が含まれている必要があります。取引先を公募して座って待っていても、優良な取引先が参加するとは限らないので、こちらから最善と思われる取引先に働きかけていく必要があります。市場には「逆選択」という言葉もある通り、望ましくない相手ほど、向こうから積極的に働きかけてくる傾向があります。

 取引先を競争させるには、相対の交渉、入札、リバースオークション、カテゴリーソーシングなどどういう形で競争させるのがベストなのかということを見極める必要があります。

 一番大切なのは、競争の結果、実際に取引先を切り替えるということを実績として業者に示していくことです。サプライヤの洞察力は厳しく、あなたがいくら相見積を取ろうと、本当に切り替える覚悟がない時にはそれが見透かされ、「本当にほかの取引先と取引できるのなら、さあどうぞ」と余裕で構えているものです。サプライヤになめられないようにするためには、多少の切り替えによって生じるトラブルは覚悟した上で、冷徹な判断の下、サプライヤを切り替えるべき時は、果敢に切り替えるという実績を積み重ね、それを取引先に示していく必要があります。

 残念ながら、競争的に事業主体を選定するというのは、これだけの手間と覚悟が必要なので、上がどれだけ口を酸っぱく言っても、担当者レベルでは聞き流しているというのが実情です。担当者にしてみれば、そこまでするモチベーションやインセンティブがないのです。

 担当者にしてみれば、「今の取引先には非常に細かい注文を聞いてもらっている」「今の取引先でないと細かい品質要求には応えられない」と説明しつつ、相見積は取ってお茶をにごしつつ、今の取引先と仲良くするというのが、一番心地よいのです。

 こうした巧妙なサボタージュを担当者が行った時、担当者に対抗する術を持つ経営者、マネジメントがいないからこそ、事業仕分けでも、必ずと言ってよいほど、「委託先を競争的に選定」との指摘がなされているのだと思います。

 これから先のテーマになりますが、仕分け人の立場で「最善の事業主体を選べ」と言うのは簡単です。経営者やマネジメントの立場にある人間が考えなければならないのは、そんなのは当たり前で、「どうすれば、最善の事業主体を選べるか」ということであり、それが、現場レベルの意思決定において、「1.最適な事業主体を考える」「2.競争的に事業主体を選定する」ということができているかを常にチェックすることであり、それらができるような現場の環境を整えるということです。(中ノ森清訓)

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