いつの日か消えるかもしれない……美しき氷河松田雅央の時事日想(2/3 ページ)

» 2010年06月22日 11時43分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)

 「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は世界で最も権威ある温暖化問題の研究機構だ。この組織は世界的な異常気象の発生を契機に、科学的・技術的・社会経済学的な見地から包括的な評価を行うことを目的として、1988年に世界気象機構(WMO)と国連環境計画(UNEP)により設立された。政府関係者に限らず世界有数の科学者が参加し、世界から研究データを集め、科学的知見に基づいた政策立案を行なっている。

 IPCCは2007年に発表した第4次評価報告書の中で「気候システムの温暖化には疑いの余地がない」とし、「20世紀半ば以降に観測された世界平均気温の上昇のほとんどは、人為起源の温室効果ガスの増加によってもたらされた可能性がかなり高い」と結論付けている。

 地球はこれまで大規模な気候変動を何度も繰り返してきた。古代気候の研究によれば最後の間氷期(約12万5000年前)における世界の平均海面水位は20世紀に比べて4〜6メートル高かったとされる。地球公転軌道の違いにより極域の平均気温は現在より3〜5度高かったようだが、人為的な影響によって20世紀ほど大きく気温が変化したことは今だかつてない。

気温、海面水位、北半球の積雪面積の変化、(a)世界平均地上気温、(b)世界平均海面水位、(c)3〜4月における北半球の積雪面積(出典:IPCC 第4次評価報告書第1作業部会報告書)

ないとは言えない「科学情報のウソ」

 それでも、温暖化の人為影響説に異を唱える研究者は少なくない。氷河の縮小にしても「本当に人間が原因なのか?」というわけだ。

 そういえば2010年初頭、メディア上でICPP第4次評価報告書のミスが報じられ話題になった。「国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2007年に出した第4次評価報告書で、ヒマラヤの氷河が『このまま地球温暖化が続くと、2035年までに消失する可能性が非常に高い』とした記述について科学的根拠がなかったと、英紙サンデー・タイムズが17日付で報じた」(朝日新聞、2010年1月19日付)

欧州最高峰のユングフラウヨッホ駅と諸施設(左)、ユングフラウヨッホの観測所(山頂部分に立つ施設、右)

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