上杉:今後は日本にも「ハフィントン・ポスト(The Huffington Post)」(政治ブログとしてスタートし、今や新聞社のWebサイトを上回る影響力を持つ)や「ポリティコ(Politico)」(ワシントンDCを拠点にした政治専門メディア)のようなWebサイトができるといいですね。例えば掲載されている記事に対し、読者がお金を支払うシステムになれば、記者も活性化されるのではないでしょうか。
しかし今は大きな組織が、記者個人の発信を邪魔している。多様な価値観を持つ記者がたくさん出て、論争を起こし、その中から選択すればいいだけなのに。社説などで「ウチの会社の考え方はこうです」と提示するより、記者個人の考えに対し、読者が賛成・反対すればいいと思う。
これまでは記者クラブ制度があって、みんな横並びの記事を書かざるを得なかった。これからは同じ記事を書かない方が、ビジネスになるのではないでしょうか。
相場:あるネタをつかんでいるのにもかかわらず、そのネタを扱う記者クラブのキャップと仲が悪いから記事を書けないというケースがあるんですよ。例えばボクは金融関係のクラブにいましたが、産業関係クラブに詰めている記者ともめたりする。そうなると声が大きい方が勝ったり、年次で勝ったりする。
窪田:私の知人のある大企業の広報が、A新聞の記者にこっそり特ダネをリークして言ったそうです。「これは公的に発表するつもりはないネタだ。A新聞だけだ」と。ところが、その記者は「それじゃ書けませんよ」と特ダネを断った。きわどいネタがゆえリスクがある。クラブの発表じゃないですが、ペーパーで書かれた情報じゃないと安心できないという他社との横並び意識が邪魔したんですね。その広報担当者はあきれていましたね。
上杉:やはり新聞記者というのはエリートなんでしょうね。失敗することに対し、ものすごく恐怖感を抱いていますから。でもジャーナリストであれば失敗を恐れてはいけない。もちろんミスは極力少なくした方がいいが、人間だから失敗は避けられない。
社内での立場やこの記事を書いたらこうなる、ということを考えれば書けなくなってしまう。あえて物議をかもす必要はありませんが、少なくとも自分の取材に対しては正直になった方がいいですね。
窪田:社内で、賛否両論になる記事は書きたくない、という思いがあるのかもしれない。当たり障りのないスクープであればいいのでしょうが、「お前、これはやりすぎじゃないのか!?」という記事を書いてしまうと、その後の出世に響くかもしれない。
相場:社内で真っ先に刺されましたね。ボクの背中は傷だらけですよ(笑)。
窪田:相場さんは然るべくして、外に飛び出して行ったのでしょうね(笑)。
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