ニホン経済を救うのは、菅直人か小沢一郎か藤田正美の時事日想(1/2 ページ)

» 2010年08月30日 08時40分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 9月14日に行われる民主党代表選挙。菅直人総理と小沢一郎前幹事長の一騎打ちである。それにしても菅総理は、小沢前幹事長が出馬すると聞いてから傍目にも異様な高ぶりを見せた。何だか小沢さんが出馬して、これで自分が圧勝すれば小沢潰しにもなるし、自分の基盤も盤石という読みでもあるのだろうかと疑ってしまう。

 それはともかく、せっかく代表選挙を戦うことになったのだから、今の日本にとって喫緊の課題をどう解決するのかという政策論争をきちんとやってもらいたい。多くの国民はそう考えているはずだ。

最大の話題は円高と株安

 問題は喫緊といってもいろいろあるので、その優先順位をどう考えるかだと思う。いま経済界も政界も含めて最大の話題は円高と株安である。15年ぶりという円高になって、80円を割り込んで史上最高値である79円75銭を突破するかもしれないという。菅総理や野田財務相も突き上げられて「介入」を示唆したりするが、これはいずれにしても「口先介入」にしかすぎない。むしろ日銀が重い腰をようやく上げて、何を言うのか。それが注目されるところだ。

 しかし円高そのものよりも、問題は日本の景気をどうするのかという問題のほうがずっと重い気がする。特に日銀は、景気は上向いているという認識を一貫して崩さず、そのために金融をさらに緩和することもしなかった。米国のバーナンキFRB(連邦準備理事会)議長は、景気は「いつになく不透明である」と慎重な言い回しを続けてきた。企業収益は回復しても、雇用は増えず、企業も設備投資には及び腰だ(日本と同じように企業は現金をたっぷり積み上げている)。その意味では、8月31日に取りまとめられる経済対策がどのような「新味」を打ち出すのかのほうに注目すべきなのかもしれない。

 なんと言っても日本はデフレからいまだに抜け出せないでいる。ややおおざっぱな言い方で恐縮だが、まさにここ15年ほどはデフレ状況にある。デフレはさまざまな問題を引き起こす。基本的にはデフレ下では消費する意欲は湧かない。それはそうだ。明日値下がりするのなら今日買うことはあるまい。明日まで待てばいいのである。このデフレからどうやって脱却するのか、この問題の解決は簡単なようで簡単ではない。

 消費者の財布のひもは雇用が増えない状況ではなかなか緩まないだろうし、自動車や家電、住宅などへの補助金も効果はだんだん薄れてくる。そうするとキャッシュリッチな企業が国内で設備投資をしてくれることに期待したいところだが、企業にとってはこの円高になる前から国内立地よりもアジアを中心とする海外立地に踏み切っている。為替よりも人件費や法人税、そしてFTA(自由貿易協定)による第3国に輸出した場合の関税の安さ、さらには将来の需要動向などを勘案した結果である。別に今回の円高で海外進出が急激に進んだわけではない。

 その意味では、法人税の引き下げはどうしても急がなければなるまい。これまで労働者の質という面では日本が圧倒的に優位であるとの認識があったが、安閑としていられるほどの優位性はもはや存在しない。先日もNHKのドキュメンタリーで、日本企業のタイ工場に勤めるタイ人の技術者が、日本製の部品を点検しながら「タイで作ったほうが製品としては優秀だ」と語っていたのが印象的だった。

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