草履に編み込まれた“メリヤスパーツの物語”郷好文の“うふふ”マーケティング(2/3 ページ)

» 2010年09月02日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

やりとりを物語にする

 もう1つ、小高莫大小工業の成功例を挙げよう。イラストレーター兼ニット作家であるmotusnobsさんとコラボしたiPhoneケース「BUKOTSU」。これも作り手とのやりとりから生まれた。

iPhoneケース「BUKOTSU」(出典:motusnobs)

 2つともリブという部品が製品に化けた、中小企業には垂ぜんの成功例。だが成功の影には失敗あり。デザイナーとの交渉では、手数料やチャネルという現実の問題が先行して頓挫の連続だった。しかし、やりとりを重ねながら、実際にもの作りを始めると、うまく回り出した。

本が読めなかった

 成功要因はやりとりだけではない。もう1つはネット直販。小高莫大小工業のWebサイトは実によくできている。見た目や使い勝手だけではなく、内容がいい。それぞれの商品に物語があるから読ませるのだ。

 「なぜWebサイトのコンテンツが良いのですか?」と聞くと、答えは意外だった。

 「実は本が読めなかったことに端を発するんです」

 小高さんは、本をまったく読まない子どもだった。国語は大嫌いで通信簿はいつも「2」。教科書を読まなかったのに1にはならず、2でとどまったのは、試験に出る箇所だけ読む技術を開発したから。

 「“それは”という接続詞から始まる段落だけ読むんです(笑)」

 段落読みでテストをしのぎ続けた挙げ句、不読がポリシーに。そのためか、大学では一般教養の単位を落として留年した。それがきっかけで、在学中から実家の工場勤めをして家業を継いだ。

 読み書きは表裏一体のものなので、会社に入ると伝票の書き間違いを連発。訂正に時間を取られる日々が続いた。だが、「自分だけがするミスではない。手書きノートの顧客台帳をシステム化すれば、誰でも正確な発注ができる」と小高さんは考えた。そこで父である社長を説得、PCを導入し、半月で3000件の顧客台帳を構築した。1995年のことである。

 システムに自信を得た小高さんをさらに変えたのはブログだった。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.