さらに言えば、画一的なものを求めているのは企業だけではありません。世界一品質に厳しいと言われる日本の消費者もまた、非常に強く画一性を求めています。
1円でも安い食品を求めていくつものスーパーをはしごする主婦は、その行動によって自分の夫の給与が上がること、自分の息子が派遣社員から正社員になれることを邪魔しています。
誰も彼もがサービスの質や品揃えのあり方や商品のディスプレイには目もくれず、価格だけでモノを選ぶようになるならば、企業側がその裏返しであるコストだけを追求するようになるのは当然の帰結です。
需要側が虫食いのあるキャベツも曲がったキュウリも買わないというなら、業者側は農薬がたっぷり付着し、遺伝子操作された“効率よく作られた野菜”を店頭に並べようとするでしょう。「自分の子どもがほかの家の子と同じでないと不安だ」と親が言うなら、学校は地域や子どもの特性や個性に関わらず、画一的な教育を提供しようとするでしょう。
世界のルールを変えるのは“供給側”ではなく“需要側”です。多様性に価値を置く、“独自の視点で商品やサービスを選ぶ需要者”の存在があってこそ、企業も国もさまざまなもの、他者とは違うものを提供しようと考えるのです。
「他人と同じでないことを怖がらないこと。むしろ楽しむこと。それを需要者として消費行動に反映させること」、これが新たな価値を創造する“効果の世界”への第一歩となるのです。
それでもこの国では「ほかと区別も付かないほどにきれいに揃ったもの」が大好きな人がたくさんいます。彼らの力はまだまだ相当に強固です。しかも企業は長らく効率でしか勝負をしてきておらず、多様性を組織に取り組むことに非常に慎重です。
これをいったいどう変えていくのかが、この国の次の10年の課題であると思います。
そんじゃーね。
兵庫県出身。バブル最盛期に証券会社で働く。米国の大学院への留学を経て外資系企業に勤務。2010年秋に退職し“働かない人生”を謳歌中。崩壊前のソビエト連邦など、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。Twitterアカウントは「@InsideCHIKIRIN」
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