金融緩和、円売り介入に対して期待と懸念が入り混じって方向感のない展開清水洋介の「日々是相場」夕刊(2/2 ページ)

» 2010年10月04日 16時11分 公開
[清水洋介,リテラ・クレア証券]
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明日の相場雑感

 先週末の米国市場は堅調となったのですが、円高を嫌気する動きから寄り付きの売り買いが一巡となったあとは軟調となりました。それでも、為替が一気に円安に振れる場面もあり、先物にもまとまった買いも見られ一時大幅高となるなど、腰の据わった売りも見られませんでした。本日から開催されている日銀の金融政策決定会合で追加金融緩和が期待されることや、為替の介入も期待されることから、売り叩き難い一方で、逆に追加金融緩和の効果が疑問視されたり、為替の介入が見られないといった失望も懸念されて買い上がれず、相変わらず目先筋中心の方向感のない展開となりました。

 先週に続き「円売り介入」に対する期待が強く、為替に敏感に反応する展開となっています。米国株が堅調、商品相場も穀物市場は高値追いも一段落となりましたが、金を筆頭に高いものが多く、世界的な経済拡大が期待されるなかで、日本という国が忘れ去られてしまったかのように株式市場も冴えない展開です。金融緩和期待もあるようですが、日銀は米FRB(連邦準備理事会)のような信頼感もなく、金融緩和や円の介入期待で素直に買い切れず、相変わらず方向感のない展開となっています。

 大型増資が相次いで発表されていることで、株式価値の希薄化を懸念する動きから売りが先行となっているものと思います。このコラムでも何度か述べてきたことですが、株式を保有することのメリットがなく、手数料ばかりが安くなって売買コストばかりが下がってしまうことも株価低迷の一因と考えても良いのではないかと思います。株式を保有するメリットがあれば、ある程度安心して保有できる会社の株式であれば、公募増資などでもかつてのバブル時代のように「時価よりもディスカウントで手数料なしで買える」というメリットもありましたが、手数料が無いに等しく、公募を引き受ける先もないような時代では公募増資も単に「株式価値の希薄化」という側面が強調されてしまうのでしょう。

 本来、公募増資も流動性の確保や財務を立て直して新たな収益源に投資をするための資産補充と考えれば前向きに感がえていいはずです。ただ、株式を保有するメリットでもないと、そうした企業の中長期的な戦略に乗り切れず、目先の需給悪化ばかりが目立ってしまうということなのでしょう。税制の問題などを絡めて、株式保有のメリットに対しここまでほとんど議論されておらず、配当課税やキャピタルゲイン課税、そして手数料の引き下げばかりが目立ち、証券会社の収益も保有することよりも売買することに依存しているのですから、「貯蓄から投資へ」という流れにならないのでしょう。

清水洋介氏のプロフィール

慶應義塾大学法学部卒。1983年に大和證券に入社、以来、マネックス証券などを経て現在リテラ・クレア証券で相場情報などに携わっている。営業やディーラーの経験を基に、より実戦に近い形でのテクニカル分析、市場分析に精通している。日本証券アナリスト協会検定会員、日本テクニカル協会会員。著書に『江戸の賢人に学ぶ相場の「極意」 』 (パンローリング)、『儲かる株価チャート集中セミナー』(ナツメ社)。清水洋介の「株式投資の羅針盤


※掲載されている内容は、コメント作成時における筆者の見解・予測であり、有価証券の価格の上昇または下落について断定的判断を提供するものではありません。


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