世界中の人から心臓音を集めたアーカイブ:瀬戸内国際芸術祭(3/4 ページ)

» 2010年10月20日 08時00分 公開
[上條桂子,エキサイトイズム]
エキサイトイズム

 島の北東・唐櫃岡にある、内藤礼氏と西沢立衛氏による「豊島美術館」。10月17日のオープンに向けて現在工事中にもかかわらず、多くの人がその姿をひと目見たいと足を運んでいる。

エキサイトイズム 豊島美術館 建設写真(2010年3月) 提供: 西沢立衛建築設計事務所

 バスで唐櫃岡を走っていると、美しい緑の棚田の合間に、半球をつぶしたような形で、真っ白なツルツルとした貝のような質感の建物が現れてくる。それは、岩に寄生しているフジツボのように、口を空に向けてぱっくりと開けている。柱が一切ないシェル構造の建物は「一滴のしずく」をイメージしたという。

エキサイトイズム 豊島美術館 提供: 西沢立衛建築設計事務所

 その中で内藤礼氏の作品は、「地上の生の幸福を、水が生まれてくるその瞬間を見つめることを通して、静かに実感できるような」そんな作品が展開される予定だ。農業にとって、人が生きるために必要な水の存在そのものをこの美術館で体験できるような場所になるだろう。

 内藤礼氏はこれまでに、風の動きや水のたゆたう姿、空気の移ろいといった自然現象を、身の回りにある物を使って、ふっとつかみ取って目の前に静かに提示してくれる。小さな小さな一瞬が世界の深淵につながっていく作品空間は、祈りの場所、瞑想空間となって私たちを取り囲む。繊細でふわふわとした繭に包まれるような、そんな感覚をこの場所で早く味わいたい。

 いくつかの作品を楽しんだら、ランチやブレイクにはこの場所へ。建築家・安部良氏が手がけた「島キッチン」だ。唐櫃岡地区にある民家をレストランに改築した。母屋部分をすべて大きなキッチンに改築し、その周りをテラス席で丸く囲む。

エキサイトイズム 「島キッチン」安部良

 そして中庭の中心には大きな柿の木が生えており、それをぐるりと取り囲むようにテラスがある。ここでは、島のお母さんたちが地元の素材を使ったレシピを考案し、調理やサーブも地元の人びとが行う。それを大きくバックアップするのは東京の丸の内ホテルのシェフたちだ。

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