ミナ ペルホネン15周年記念展のテーマは「進行中」(2/5 ページ)

» 2010年10月28日 21時00分 公開
[上條桂子,エキサイトイズム]
エキサイトイズム

 青い花がランダムに咲いているテキスタイルは、2009年に発表された「sonata」。このテキスタイルは、全部の花の形が不ぞろい。洋服の下に敷かれているのが原画なのだが、指の腹を使ってひとつひとつの花を描いているのだという。

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 よく見ると絵の具を指で伸ばした跡があるのが分かる。「手で描くこと」は、ミナ ペルホネンが大切にしているものづくりの1つだ。指先から伝わる感触をテキスタイルで表現する。このランダムに咲き乱れる花は、コンピュータなどでははじき出せない、絶妙な不ぞろいのバランスが保たれている。

 「貼り絵」もミナのテキスタイルによく登場する手法だ。手やハサミで色紙を切ったりちぎったりし、それを多層に組み合わせ1つの絵を完成させる。そうしてでき上がるのは平面ではなく、立体の絵。一枚一枚手でちぎられる紙は1つとして同じものはない。

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 この馬のテキスタイル「oasis」の背景となっている青い楕円もそうだ。同じように見えてすべて違うかたち。このテキスタイルにはもう1つのストーリーがある。中心に一頭の馬がおり、周りの馬はその馬に注目している。中心の馬はちょっといい気になっているのかもしれない。しかし、中心の馬の頭を見ると一羽の鳥がいる。周りの馬たちは、中心の馬ではなく頭の上の鳥を見ていたのだ。

 ミナのテキスタイルには、時折、そんな風にストーリーが込められているものもある。一枚一枚をじっくりみて読み解いていくのも面白いだろう。

 次の展示台では、スケッチやドローイングで起こされた原画が実際のテキスタイルになるまでの様子が分かる。ミナのテキスタイルづくりには欠かせない工場や職人に送る指示書ややりとりの一部だ。これは、実際にものづくりの仕事に携わる人は非常に興味深い内容だろう。

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 原画で書き起こしたイメージを、手触りや風合いまで的確に伝え、丁寧に作り上げていく。ミナのものづくりは、決してアトリエの中だけで行なわれているものではなく、多くの技術者によって支えられ、彼らとの信頼関係を築き上げていくことで完成する。

 皆川氏のものづくりに対する考え方を綴ったメモ書きも興味深い。このようにノートにそのときの考えをメモし、デスクに貼っておくこともある。その中に、皆川氏からスタッフに送られたイラスト付きのファクスメッセージを発見した。これは微笑ましい。

 壁一面にずらりと並べられたうろこの形をした布は、これまでにミナ ペルホネンで作られてきたテキスタイルの一部、ごく一部である。

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 展示されているのはおよそ400枚強、実際に流通しただけでもその図案は650種類以上、構想やサンプル、色違いなども加えるとさらに多くのテキスタイルを生み出してきた。そしてこの布も1枚1枚、布の端っこをミシンで縫い上げて作った。

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