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» 2010年11月09日 08時00分 公開

“高級おにぎり”誕生の、ちょっとした裏話を聞いてきたローソンを“研究する”(2/3 ページ)

[土肥義則,Business Media 誠]

発売初日に高級おにぎりが消えた

米飯・デリカ部の伊藤一人部長

 そして2002年11月に「新潟コシヒカリおにぎり」(焼きさけはらみ、熟成生たらこ)を発売し、この7年間で約10億個を販売する人気シリーズに。「価格が168円(現在は139円)と高かったので、ヒットするかどうか不安でしたね。しかし予想していた数よりも、倍以上のペースで売れていきました。ただそのとき『新商品のおにぎりが売れている』ことを公表できなかったんです。実はお米の問屋さんに『ローソンがコシヒカリを購入していることが分かってしまうと、相場に影響が出てしまう。なのでそっと買ってほしい』と言われていました。なので公表せずに、コシヒカリを確保していました」

 またサケを具材にする上で、問題が浮かびあがった。当時、サケを使ったおにぎりといえば、フレーク状にしたものばかり。「高級おにぎりにはサケの塊を入れたい」という思いがあったものの、骨があるのでおにぎりの具材には適していなかった。社内からは「骨のない部位を使ったらいいのでは」という声があったが、「値段が高いから無理」という反対意見があった。しかし具材の製造拠点をタイに設けることで、商品化を実現することに成功した。

 そして新商品の発売日。伊藤さんはお店に足を運ぶものの、高級おにぎりが店頭に並んでいなかった。「おかしいな……」と思いつつも、2軒目に。しかし次の店にも置いていなかったので、本部に問い合わせることに。「何かトラブルでも発生したのか?」と聞いたところ、「売り切れている」という返事。開発に携わった者として、この上なくうれしい事態だったが、このあとトラブルに巻き込まれてしまう。

“高級おにぎり戦争”が勃発することに

 高級おにぎりは、開発担当者の予想をも裏切る形で売れていった。しかしすぐに具材不足に直面することとなる。「タイの工場でサケを加工していたのですが、船で輸送していたので時間がかかるんですよ。計算すればすぐに分かりました……やがて店頭におにぎりが置けなくなることが」。テレビCMを流しているのにおにぎりが買えない――そんな事態だけは避けなければいけない。そこでコストを度外視して、飛行機でサケを運んだ。

 それでも具材不足が解消されなかったので、千葉県の銚子市に工場を確保。「まだ工場は動いていなかったのですが、無理矢理開けてもらいまして。サケは素人には切れないので、漁師さんを集めて切ってもらったんです。『これでなんとかなる』と思ったのですが、漁師さんにも自分の仕事がある。当然ですよね。漁に出なければいけないので、早く家に帰って寝なければいけない。しかしこちらとしてはサケを切ってもらいたい。なので眠気覚ましのドリンクなどを差し入れして、残業をお願いしました(笑)」

 その後、コンビニ業界ではいわゆる“高級おにぎり戦争”が勃発することに。きっかけはローソンの脱「値下げ競争」だったが、結果的に業界を巻き込んでの動きに発展していく。そして今では定番おにぎりを上回る勢いで、高級おにぎりが売れているのだ。

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