“高級おにぎり”誕生の、ちょっとした裏話を聞いてきたローソンを“研究する”(1/3 ページ)

» 2010年11月09日 08時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

 ローソンに行って、聞いてみたいことがあった。世の中の多くのモノが値下げをしているのに、ローソンではなぜ時代に逆行するかのように次々と“高級おにぎり”を販売しているのか。例えば「新潟コシヒカリおにぎり」は139円、「贅沢新潟コシヒカリおにぎりシリーズ」にいたっては168円もする。しかしこのデフレ時代に、高級おにぎりが売れているという。

 「コンビニのおにぎりなんてどこも同じ」「いつも同じ1個105円のツナマヨを買っている」という人も少なくないだろう。記者も同じように考えていたが、どうやら時代は変化しているようだ。売上高を見てみると、1個100円前後のおにぎりが前年比95%ほどなのに対し、高級おにぎりは同120〜140%ほどで推移しているという。

ローソンの店頭に高級おにぎりが並ぶ

コシヒカリのお米を使う

 ところで高級おにぎりはどのようにして、誕生したのだろうか。「ローソンでも2002年ころには、おにぎりを値下げしていたんですよ。『良いモノをどんどん安く』といった戦略で、100円のおにぎりを80円で販売していました。確かに売り上げは伸びたのですが、利益が厳しくて。数量ベースで前年比125%ほど伸ばさないと、利益がトントンになりませんでした。なので苦戦しましたね」と当時のことを振り返るのは、米飯・デリカ部の伊藤一人部長。

 当時、“価格競争”に巻き込まれたのは、ローソンだけではない。他の業界でも同じようなことが起きていた。例えばマクドナルドのハンバーガーは1個80円から59円に、牛丼チェーン各社も並盛400円台から200円台に、それぞれ値下げ合戦を繰り広げていたのだ。

 しかしローソンのおにぎりは、安く売っても利益がなかなかついてこない状態に陥っていた。「このまま価格競争の中で勝負していくのか」それとも「別の形で勝負していくのか」――その選択が迫られていた。そしてローソンが選んだのは「他のコンビニにはないおにぎりを作っていこう」という道だった。就任したばかりの新浪剛史社長が陣頭指揮を執り、おにぎりのプロジェクトチームを作った。その一代目のリーダーに抜擢されたのが、伊藤さんだったのだ。

 「おにぎりをゼロベースで見直したんですよ。そして『新潟のコシヒカリを使おう』という声が挙がったのですが、当時、コシヒカリを使うのは常識外れ。他のお米と比べ、コシヒカリの価格は2〜3割高い。社内からも『無理だ』といった声があったのですが、おにぎりを食べた瞬間に『“おいしい”と感じられないとダメだ』という思いが強くて、コシヒカリにしました」

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