焦らせる“大人”に騙されてはいけない。就活の問題点に迫る吉田典史の時事日想(3/4 ページ)

» 2010年11月26日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

“企業本位”の 就職活動!?

 新卒の就職活動はどこに問題が潜んでいるのだろうか。赤堀さんは“企業本位”に進められていることを問題視している。「企業の人事部、その採用をバックアップする業界や企業、さらに大学のキャリアセンターなどが結果として、学生たちを精神的に焦らせるようにしているのです」

 赤堀さんによると、一流といわれる大企業には、数千人から数万人の学生がエントリーする。自身が勤務した業界も「数万人がエントリーし、数十〜数百人が内定」という狭き門だった。「あえてセミナーをしなくとも、優秀な学生は採用できるレベルだった」と総合商社の人事部のころを振り返る。

 それでも大企業は、多額のコストをかけて採用専門のWebサイトを設けたり、セミナーを全国各地で開く。その狙いはもちろん、優秀な学生を採用することにあるが、ほかに企業のブランドイメージを上げることもあるという。「人事部は試験に落ちた人が、今後、顧客や株主、取引先などになることを想定し、自社についていい印象を持ってもらうために大々的なPRをしている」

 一方で、その採用活動をバックアップする業界がある。就活の時期になると、こういう業界の会社から「合同セミナー」などの誘いが学生のもとに届く。ここで赤堀さんは力を込めて話す。「この時点で、多くの学生は焦り始める。仕事観がないままに、手当り次第に動き、疲れ切っていく。それは企業の人事部やこういった業界の会社の思惑どおりなのです」。仕事観を持つことを説くのは、人事部に在籍していたときにこのような現実を見てきたからでもある。

 こうした動きに対し、大学側がブレーキをかけるべきなのだが、赤堀さんはそれに懐疑的だ。「大学にはキャリアセンターがあるが、ここの職員はかつて大企業などに勤務していた人が多い。自分たちが仕事観を持ち合わせていないまま、就活をしていたことをそのまま学生に指導をしているケースもある。今の時代は明確な仕事観を持っていなと、絶対にうまくいかない」

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