公的年金は誰に支払うべきなのかちきりんの“社会派”で行こう!(2/3 ページ)

» 2010年12月13日 08時00分 公開
[ちきりん,Chikirinの日記]

最もインパクトの大きい改善策は

 しかし、支出を削減するために最もインパクトが大きい改善策は、「たとえ保険料を払ってきた人でも、全員には払わない」という方式への転換です。

 現在の公的年金は「保険料を払っていた人に払う」方式です。例えば、元一流スポーツ選手や元大女優、成功した起業家など、何十億円の資産を持っている人も受け取れます。また元会社員であれば、現役時代の収入が多い人ほど多額の年金がもらえます。一方、若い時に年金保険料を払えないほど貧しかった人は年金をもらえないのです。これでは“社会保障制度”とは言い難くないでしょうか。

 年金が「払った人がもらう」仕組みであるのに対し、生活保護は「困っている人がもらう」仕組みです。この2つは、天と地ほど違う思想の制度です。

 そしてちきりんの予想は、「年金も早晩困っている人がもらう制度に変更になるのではないか」というものです。つまり、年金と生活保護は最終的には一体化する可能性があると考えています。

 具体的には生活保護と同様、一定以上の収入がある人はもちろん、資産が一定以上ある人にも年金が支払われなくなるということです。貯金や個人年金がある人、親の資産がある人、高額の企業年金を受け取っている人、高齢でも働いて一定の収入がある人などには、「まずは自分の貯金や私的年金で生活してください」ということになります。

 この方式がほかの施策と異なるのは、「困る人の有無」です。受給開始年齢の引き上げや、支給額の削減では、食べていけない高齢者が急増します。それは生活保護支出の増加という形で財政に跳ね返えり、年金財政という特別会計が改善されても、一般会計の赤字が大きくなるだけで、国全体としては財政が改善しません。

 また、生活保護の支給を絞ればホームレスの高齢者が増加し、問題が「目に見える」形で社会に突きつけられます。

 ところが、「困ってる人だけに払う」というシステムへの変更であれば、大半の人が文句を言うでしょうが、実は誰も生活には困らないのです。なぜなら、もらえなくなる人は収入か資産があるからです。彼らはホームレスになるわけでもありません。孫にお小遣いが渡せなくなるだけです。これがほかの正攻法の施策とまったく違う点です。

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