“道徳的”な消費はデフレを救うか?(2/2 ページ)

» 2010年12月15日 08時00分 公開
[猪口真,INSIGHT NOW!]
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寄付付きの商品の方がよく売れる

 オイシックスはすでに通販サイトでさまざまな寄付対象の商品を扱っているが、今回カボチャを追加した。これらの商品の売り上げの一部は「テーブル・フォー・ツー」という途上国への食料寄付を行う組織を通じて寄付される。商品価格が通常よりも高いにも関わらず、販売量は寄付付きのほうが多いという。

 このオイシックスの例のように、商品の機能は変わらないのに、「社会貢献」の要素があることで、売り上げが伸びるのが、エシカル消費の力だ。

 人は本質的に「正しいことを行いたい」「弱者を助けたい」というマインドを持っているもの。こうした社会貢献を商品の持つ背景、ストーリーの中に組み込み、消費者、企業双方で、途上国貢献、弱者貢献、環境貢献に取り組むことのすばらしさは、誰にも否定できることではないし、昨今のマーケティングセオリーにおいても理にかなったアプローチだ。

 しかし、考えと行動が結び付かない典型的なことでもある。例えば、似たような機能を持つ商品で、一方は人件費の安い国で大量に作られ徹底的にコストダウンを考えて作られた500円のもの、もう一方は、途上国支援の考えのもと技術指導や教育を含め、小ロット多品種生産で作られた1000円の商品、どちらを買うべきかと尋ねれば、大半の人は1000円の商品だと答えるだろう。

 しかし、普段の生活の中で、どちらを選択するかとなると、購入機会やチャネルがないということを差し引いても、ほとんどの場合、逆の結果になるのではないか。選挙の前に世論調査を行って「選挙に行くか」と聞けば、8割近くの人が「必ず行く」と答えるのにも似ている。実際は5割の人しか行かない。

 商品やサービスの機能だけではなく、社会貢献まで付加価値として提案しないと消費者に受け入れられないとは難しい時代になったものだが、企業の存在自体の意味を考えれば、本来あるべき姿はこういったところにあるのかもしれない。(猪口真)

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