親の近くに住むと得をする? 不況で増加する“親子近居”の理由あなたはどうする? 住まいの選び方(1/4 ページ)

» 2010年12月16日 08時00分 公開
[権田和士(日本エル・シー・エー),Business Media 誠]

権田和士(ごんだ・かずひと)のプロフィール

早稲田大学卒業後、日本エル・シー・エーに入社。現在は同社で執行役員。住宅業界向けコンサルティングで、日本最大規模の実績を誇る住宅不動産事業部の事業部長を務め、これまで50社以上の支援を行う。1年間のうち、300日以上講演や研修を行い、その研修生は年間でのべ4000人以上に及ぶ。住宅・不動産業界の未来を見据えた業界動向のほか、全国各地の工務店やデベロッパー、ハウスメーカーの個別事情に精通している。

また住宅業界の専門誌などで、数多くのコラム連載を行っている。経営コラム「住宅業界を斬る!」を連載中。


 あなたが住宅を購入するとしたら、どんな場所に住みたいだろうか。勤務先から近い場所、実家から近い場所、都心、自然のある場所……人によってその希望はさまざまだ。ただ、この不況の中「親の近くに住みたい」と思う人たちが増えていることをご存じだろうか?

 国土交通省が発表している調査データによると、親世帯と近居している既婚者世帯は52%にのぼる。うち乳幼児の子育て真っ最中と思われる25〜34歳の世帯では62%とさらに多数を占めるようだ。

 同居の割合は年々下がっているものの、近居の割合は逆に上がり続けている。「同居だと親の干渉が大きいが、困ったときにすぐに相談できる距離に住みたい」という思いのもと、生活面・金銭面でも頼りやすく、かつ適度な距離を保てる「近居」や「隣居」の割合が増えているのだ。

 近居に関して「見えない大家族」「インビジブルファミリー」という言葉を聞いたことがある人もいるかもしれない。核家族化の進行や未婚化、晩婚化、高齢化などで単身世帯が増えている中、データだけ見ると小さな家族がポツポツと点在しているかのように見える。しかし、実際は親の住居から「スープの冷めない距離」でゆるやかにつながりを持つ「目に見えない大家族=インビジブルファミリー」が増えているのだ。

 野村総合研究所の調査によると、実際に「近居」や「隣居」をしているファミリーの割合は、1997年から2006年までの10年間に、28%から41%まで増えている(2006年NRI生活者1万人アンケート調査)。近居、あるいは隣居の定義は前述の国土交通省とは異なるものの、住まい方に対する意識の変化は明らかである。

 また、下のグラフを見ていただいても分かるように、親の近くに住みたいと思う「近居希望」は30代で85.2%にものぼる。この傾向はもはや日本の住まいにおける大きな流れと考えられる。

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