電気代値上げの原因は、“エコ”にあったのだ松田雅央の時事日想(2/3 ページ)

» 2010年12月24日 11時43分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]

 こういった通知文に使われる「お役所的な作文」はおそらく世界に共通するスタイルで、揚げ足を取られないよう、そつなくまとめられている。「諸事情のため、やむなく値上げします」という内容を淡々と述べているわけだが、日本の通知文であればもっとへりくだった内容になるのかもしれない。

 さて、ドイツ家庭の年間電力消費量は1人平均1000kWhで、筆者が住む地域の一般家庭向け電力料金は現在およそ23セント/kWhだから、年間料金は1人230ユーロ、3人暮らし世帯ならば690ユーロとなる。

 ここにはすでにエコ電力の負担金1.2セント/kWhが含まれており、年間1人12ユーロ、3人暮らし世帯ならば36ユーロを負担している。

 今回、エコ電力負担金が2.4セント/kWh値上げされると合計3.6セント/kWhになり、負担額は年間1人36ユーロ、一世帯108ユーロ(電力料金の約15%)に達する。

負担の仕組み

 過去の時事日想でも取り上げた通り、エコ電力生産には地域性があり、太陽光発電は日照エネルギーの大きい南ドイツ、風力発電は風の強い北ドイツ、バイオマス発電は農業・林業・酪農業の盛んな地域に多い。一方、エコ電力負担金は全国一律に設定されており、エコ電力生産の盛んな地域でも少ない地域でも額(3.6セント/kWh)に違いはない。

 このような仕組みのため、当然、エコ電力で得をする地域と損をする地域の格差が生じる。

 ドイツ16州で比較すると、エコ電力で最も利益を上げているのはバイエルン州だ。「売電の上乗せ価格という形で得られるエコ電力事業者の利益」から「エコ電力負担金という形で支払っている消費者の損失」を差し引いたバイエルン州全体の「エコ電力収支」は10億ユーロの黒字になる。これに対しエコ電力生産の少ないノルトライン・ウェストファーレン州は収支がマイナス、つまり赤字となりその額は13億ユーロにも達する。(ドイツ・エネルギー水道連盟:BDEWの資料より

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