これぞセオリー、カシオ「美肌ジブン撮りカメラ」のマーケティングは成功するか?(1/2 ページ)

» 2010年12月30日 08時00分 公開
[猪口真,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:猪口真(いのぐち・まこと)

株式会社パトス代表取締役。


 カシオは今年度四半期ベースは昨年の赤字から黒字化する予定であるものの、デジタルカメラ部門ではじりじりとシェアを落としている。そんな中、「美肌ジブン撮りカメラ」と称し、アパレルブランドとのコラボ商品の発表に加え、人気タレントのトークショーなど、EX-Z800の販促キャンペーンを行った。

 「美肌ジブン撮りカメラ」とは「自分をしっかりと撮りたいが、高精細すぎて肌の不具合が写るのも困る」という女性ニーズに応えた、自分をきれいに撮るためのカメラだ。実際に、撮影された顔は顔検出機能によって自動的に補正され、きれいになっているという。カシオの自信の提案だ。

EX-Z800(出典:カシオ計算機)

 このキャンペーンはまさに教科書通りの展開で、入念なアンケートによるマーケティング調査に始まり、明確なターゲティングとベネフィットの提示、また使用シーンの提案と合わせた新しい活用ジャンル提案、他業種とのコラボレーションまで行うという、単なる「マシン」としての訴求を超えた、秀逸なマーケティングセオリーを地でいくキャンペーンストーリーとなっている。

 有名アパレルブランドとのコラボレーションは積極的で、「ABISTE」「H.A.K×Soup」「FRAPBOIS」「COOKIE FORTUNE」などとのコラボモデルも発表し、「ABISTE」と「COOKIE FORTUNE」とのモデルは、カシオオンラインストア「Selpoi(セルポア)」にて販売中だ。

 EXILIMは昔からコラボレーションモデルには積極的で、過去、中日ドラゴンズ、ウルトラセブン、坂本龍馬、NARUTO 、天才バカボン、仮面ライダーなど、子ども向けスニーカーのようなこともやっている。

 デジタルカメラ業界は、1位のキヤノンは別として、四半期ごとに2位〜4位が入れ替わるような状況で、各社明暗を分けている。

 その1位のキヤノンでさえ、2010年第3四半期(7月〜9月)連結決算は、売上高が前年同期比2%減の1570億円、営業損失は8億円の赤字、経常損失は5億円の赤字となっており、デジカメなどのコンシューマー向け事業が落ち込んでいる。一眼レフカメラは伸びているものの、コンパクトデジカメが足を引っ張る格好となっている。

 現在はソニーだけが元気で、今年9月のBCNランキングのデジタルカメラ総合 メーカー別販売台数シェアおいてキヤノンに次いで2位となった。2010年1月には5位だったにもかかわらず、ミラーレス一眼によって一気にシェアを伸ばしてきた。

 そして今回キャンペーンを行ったカシオは、2011年3月期第2四半期の売り上げ高は前年同期比10.6%ながら、営業利益は52億円と前年の149億円の損失に比べて大幅に改善している。セグメント別でも、損失を出しているのはシステム部門であり、コンシューマー部門は健闘している。とはいえ、「EXILIM EX-Z3」が機種別国内販売台数でトップだったころやBCNランキングでキヤノンとほとんど変わらなかった2010年1月ごろの勢いはない。

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