iPadに勝てる機種はあるか? タブレット端末の未来を考えてみた郷好文の“うふふ”マーケティング(2/3 ページ)

» 2011年01月06日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

コーポレイトタブレット

 個人需要からスタートしたiPad、他社陣営は法人需要から切り崩そうとしてくる。タブレットはカタログにも予定表にも会議ボードにもプレゼンにもなるからだ。そこで業務アプリやセキュリティソフトが脚光を浴び「法人向けアプリストア」が生まれる。iPadではユーザー任せだった「顧客サービス力」がカギを握る。

 さらにポイントは価格だ。OS込みで500ドルでは利益が出にくい。アプリへの低価格圧力が、オフィススィート(オフィス業務に使うソフトウエアのセット)でもうけてきたWindows陣営には辛い。ハミ出すところで収益を上げるしかなくて、それは通信料金とアプリの大口販売である。3G・4Gを地域別に組み合わせる通信セット、アプリのバンドルが増加する。

 さらに「タブレット活用提案力」もキー。代表例として教育産業で説明しよう。

タブレットエデュケイメント

 シャープが『GALAPAGOS』をインドやアフリカで電子教科書としての需要を開拓するという報道があった。キーボード内蔵で薄くて小さいタブレットは、ランドセルにも学校の机にもぴったりなのだ。

 印刷教科書ではGoogle Bodyのような緻密な人体勉強はできない。外国語授業でもネイティブな読み上げをしてくれない。タブレットなら観察記録の画像・動画共有を気軽にできるし、遠隔地の生徒たちと共同研究も可能。ピアノが無くても音楽レッスンもできる。アイデア次第で教育現場は面白くなる。生徒募集に血眼な学校関係者、少子化で厳しい教材会社、ウチの子が可愛いPTAや親、彼らは良い企画開発にはお金を惜しまないだろう。

Google Body

 「タブレット=教科書の代替」ではないのだ。それをスッパリ忘れること。教えるのも教わるのも楽しい「タブレットエデュケイメント(エデュケーション+エンターテイメント)」を創造することがカギ。教育カリキュラムは根本から変わる。さて先生たちは付いてこれるだろうか。

タブレットエクスペリエンス

 最大の変化が訪れると言われる書籍市場はどうだろうか。見えてきたのは「印刷本と電子本は違う」という事実である。iPadマガジン『Wired』『Vanity Fair』など電子雑誌は振るわない。書籍でも専用リーダーのKindleに水をあけられた。なぜなら紙を液晶に置き換えただけで「紙雑誌でないこと」が乏しいからだ。「電子が紙をマネをしている」うちは、電子読者のハートを射止められない。

 だが、2つの傑作iPadアプリ「Flipboard」(ブログやTwitter、Facebookで“自分だけのリアルタイムマガジン”を作る)と「Aweditrium」(音楽アーティストの歌・画像・歌詞・動画・インタビューを碁盤状のマルチタッチで広げる)は、どちらもマガジンであってマガジンではない。この2つはタブレットマガジンの読み方を発明した。

Flipboard
Aweditrium

 脇道にそれるが、2010年末に絵本作家ミロコマチコさんの個展『そこの山でまっといて。』を根津のやぶさいそうすけで観た。原画も素晴しいけれど、作品を収録した絵本をひたすらめくる模様を撮影した動画映像がよかった。紙のページをめくる、全景から部分へのクローズアップ、テンポのいいBGMとともに動物の絵が踊りだす様子。単純だけど見入った。印刷ページを幻灯機のように見せるだけでも面白い。

 電子ブックでは「見せ方や読み方」、つまり「タブレットエクスペリエンス」がカギを握る。印刷本の読み方をなぞっているうちはだめ。普及にはまだしばらくかかるだろう。こうして見ると、タブレットはPCであってPCではないのだ。

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