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※この記事は、エキサイトイズムより転載しています。
東京・恵比寿の東京都写真美術館で、今いちばんホットな映像表現、3Dの歴史を振り返る特別展示が開かれている。題して「3Dヴィジョンズ 新たな表現を求めて」。東京都写真美術館は、その名のとおり写真史を語る上で貴重な作品を多数収蔵しているが、実は映像史を語る上で重要な資料も収集している。今回はそれらを中心に、意外に古い3Dの歴史を俯瞰(ふかん)することができる展示となっている。
3Dの躍進といえば、やはり2009年末に全世界同時公開されたジェームズ・キャメロン監督による映画「アバター」のヒットが記憶に新しい。あれから約1年が経った今、映画館ではさらに3D上映が増え続け、2011年初頭にはヴィム・ヴェンダース監督によるピナ・バウシュ出演の3Dダンス映画「pina」もドイツで公開予定だというから、もはやハリウッドだけの話ではない。
さらに家庭のテレビ放送にも3D番組が急増している。シャネルの2011年春夏プレタポルテコレクションショーがBS-11で3D番組として放映されたのも、つい最近のこと。各家電メーカーから続々と発売されている3Dテレビも、もちろんそのブームの一端を担っており、ついには世界で初めてメガネをかけずに立体視できる3Dテレビ、REGZA GL1シリーズも登場したばかりだ。さらには3Dカメラ、3Dゲーム機と、拡大の一途をたどっている。
しかし、このブームは今に始まったことではなく、幾度となく繰り返してきたムーブメントでもある。その歴史は古く、起源は約170年前にさかのぼる。3D=立体視の原理は、右目と左目の位置の違いによって生じる視点のズレを利用したものだが、それを世界で初めて体系的に発表したのは、イギリスの物理学者のチャールズ・ホイートストーン(1802-1875)だった。今回の展覧会では、1838年にホイートストーンが示した、鏡を使った立体視装置のアイデアを忠実に再現している。
立体視の原理は、最初にホイートストーンが発表してから今にいたるまで、何も変わっていない。しかし、その原理をより良く再現するために、さまざまな工夫を凝らした立体視装置がこれまでに作られてきた。会場では、1850年代から1970年代までの数多くの立体視装置が展示されている。そのビューワーの多くは、当時はおそらく贅沢品だったと感じられる佇まい。これらは主に訪問販売で普及したという。インターネットもテレビもない時代に、家庭の娯楽として機能したことは想像に難くない。
では、これらの立体視ビューワーで、当時の人々は何を見ていたのか。この展覧会では、多数のステレオカードが展示されている。世界各地の風俗や風景、戦争の様子などを紹介する報道写真的なものから、女性の裸体が出てくる少々コミカルなものまで。その内容から考えてみても、一種のメディアとしてきちんと機能していたことがうかがい知れる。ドラマのワンシーンを描いた「ステージ・シナリー・カード」というのもあったというから、まるでテレビのようでもあったのだ。
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