どのように働けばいいのか? 事業部制という罠吉田典史の時事日想(2/4 ページ)

» 2011年01月21日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

 その一方で、戦力外の社員には部長らが徹底して低い評価をつけて、2年ほどで他部署へ追い出すという。ところが、引き取り手がいない。そこで、人事部が各事業部と交渉し、ねじ込むのだという。

 各事業部にいる部長の中にはうまく立ち回る者がいて、上司である事業本部長から人事の権限をもらい、“影の実力者”として君臨する。こういった人から排除されると、そこの事業本部はもちろん、4000人近いその商社全体でも「使えない奴」としてレッテルを貼られがちだ。これらを総称して、私は「大企業の中小企業化」と呼んでいる。これは特徴的な例だが、一部の大企業では確実に進んでいることである。

事業部制の2つのパターン

 就職や転職などを考えるうえで1つの問題が、このあたりにある。そこで人事コンサルタントの林明文さんに話を聞いた。

 「大企業の経営者層はこの1〜2年、早いピッチで事業戦略と人事戦略を一致させている。なぜなら損益を明確にすることが求められているからだ。このあたりを曖昧にしておくと、株主をはじめ利害関係者に説明ができない。そこで事業部制を進めているのだが、悩み事も多いのではないだろうか。

 損益を明確にすると、採算が合わない部門や子会社の存在が明らかになり、おのずとそれらを清算することがある。その場合、リストラもあり得る。ドライな会社では業績のいい事業部にいる社員の賞与は高いが、悪いところでは人員削減を行う。その中には、業績のいい事業部の社員よりも優秀な人もいる。それでも、リストラの対象になることがありうる。

 事業部制を強くすると、社員の配置転換、つまり、ほかの事業部に異動させることが難しくなる。かつては、1つの事業部でうまくいかない場合は、よその事業部に移ることができた。それがセーフティネット(安全網)になっていたのだ。

 しかし今では、それができなくなりつつある。事業部制を敷く大企業では、すでにほかの事業部の仕事を全く知らない社員が増えている。これでは、将来、ほかの部署を含めた全般的なマネジメントをできる社員が少なくなるのではないか」

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