「勘と経験」から「データ」へ? 変わる自販機販売戦略それゆけ! カナモリさん(1/2 ページ)

» 2011年03月02日 08時00分 公開
[金森努,GLOBIS.JP]

それゆけ! カナモリさんとは?

グロービスで受講生に愛のムチをふるうマーケティング講師、金森努氏が森羅万象を切るコラム。街歩きや膨大な数の雑誌、書籍などから発掘したニュースを、経営理論と豊富な引き出しでひも解き、人情と感性で味付けする。そんな“金森ワールド”をご堪能下さい。

※本記事は、GLOBIS.JPにおいて、2011年2月25日に掲載されたものです。金森氏の最新の記事はGLOBIS.JPで読むことができます。


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 2月15日からJR東日本管内のエキナカ飲料自販機acure(アキュア)、NEWDAYS、KIOSKなどで販売が始まった桃果汁飲料「モモごこち」。「地産飲料」と銘打って、福島県産のブランド品種「あかつき」のみを使用して作ったという、超こだわりの商品である。販売元はエキナカ自販機を運営するJR東日本ウォータービジネス。同社は2010年から東日本エリア地産の果物や天然水などを、地元企業との共同企画で商品化して主にJR東日本のエキナカで販売・消費する「地産エキ消」とも言うべき取り組みを行っている。

リニューアルと販売戦略

 モモごこちは2010年に販売された桃の果汁飲料「もぎたて『んまいもも』」のリニューアル商品だ。同社ニュースリリースで今回のリニューアルのポイントを調べてみる。

 「桃の産地を絞り、単一品種」に変更。「ペットボトルをリラックス&リフレッシュが伝わるデザインに刷新。キャップを桃色にし、ネーミングは飲用シーンをイメージした『モモごこち』」に改定した。中身と外見両面からの改定を行ったということだ。

 ……と聞くと、ごくフツーの製品改定に感じるのだが、筆者はこの商品からはただならぬ「気配」を感じたのだ。というのも、昨シーズンの商品、んまいももを購入している消費者の姿をエキナカでは随分と見かけた。にもかかわらず、これだけの改定をするということは、何らかの戦略的な意図が隠されているに違いないと思ったからだ。

リニューアルのポイントは……

 リリース元である同社企画部に問い合わせをしてみた。

 まず、昨シーズンの商品、もぎたて「んまいもも」の売り上げについてだ。すると、次のような回答があった。

 「販売期間中での競合NB(ナショナルブランド)主力商品と比較して、週販実績120%。果汁カテゴリーでトップ。当初目標販売数に対して実績140%」という堂々たる実績。さらに顧客の声も「ほかの高果汁の桃飲料と違って、みずみずしくて飲みやすい。さらりと飲めて、本格的な桃の味が楽しめる」と好評であったという。

 そんなに実績があり、好評だとすれば、大幅な改定を行う意図が謎である。

 産地限定・品種限定というこだわりを強める中身の改定は「地産飲料」という同社独自の取り組みからすれば分かる。しかし、商品名とパッケージという外見の大きな変更は、ターゲットが変更されたように思われるのだ。

 企画部の回答によると、外見の変化はターゲット変更というよりは、ターゲット像をより明確化したというべき結果であることが分かった。すなわち、「メインターゲット=20代〜30代の働く女性層、サブターゲット=20代〜30代の働く男性層」だという。そして、そのメインとサブの設定こそ、販売データと同社バイヤーの勘と経験のせめぎ合いの結果を表すものであったのだ。

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