コツコツお金を貯める人が、減っている理由マネーを追いかける(1/2 ページ)

» 2011年03月02日 08時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

 1998年、日本は長い“冬の時代”に突入した――。

 もちろん気温のことではない。私たちの「年収」のことだ。13年後の2011年、いまだに雪は溶けず、春が訪れる気配もない。こうした長いトンネルから抜け出せないことを、当時の日本人は予期していたのだろうか。

 国税庁の調査によると、民間企業で働くビジネスパーソン(パートを含む)の収入は1997年まで上がり続けた。収入が上がっているときは「去年より今年、そして来年」と自分たちの生活が豊かになっていくことを実感し、さらに未来に期待していただろう。

 ところが、1998年を境にビジネスパーソンの収入は減少していくことに。それが1〜2年であればそれまでの蓄えを取り崩し、生活を維持することもできたかもしれない。唯一の救いは物価の下落だが、「給料が減る」「よくて横ばい」という状態が10年以上も続けば「生活が苦しい」と感じている人は多いはずだ。

ビジネスパーソンの平均年収(横軸は年、出典:年収ラボ)

 経済環境がよくなれば、再び右肩上がりの時代がやって来るかもしれない。しかし少子高齢化が進み、人口も減り始めた。まるで国民全体が、ゆっくりと階段を下りていっているようだ。『マネーを追いかける』では、人とお金の関係を紹介しながら、今の時代を切り取っていく。もしかすると「下っていくのも悪くない」という、新たな生き方が見つかるかもしれない。

コツコツ貯める人が減っている

 家の前でスーパーカブ(バイク)が停車する。そして「○○信用金庫です。今月の積み立てにおうかがいしました」という声が聞こえてくる。

 かつて多くの家庭で見られた光景だが、最近はめっきり少なくなった。真面目に働き、そして毎月きちんと預貯金する。こうした日本人のイメージはもはや過去のものになってしまったのかもしれない。

 博報堂生活総合研究所の調査によると、バブル経済が崩壊した1992年に「毎月決まった額の預貯金をしている」(59.9%)という人は過半数を超えていた。しかしその後の景気低迷の影響を受けたのか、コツコツ貯める人は減少傾向に。そして2010年には過去最低を記録し、ついに3割(29.9%)を切った。

 こうした現象の背景には何があるのだろうか。1つには、金融機関による集金業務の縮小が挙げられる。メガバンク違って、信用金庫・信用組合の最大の特徴といえば“Face to Face”。顧客と接する機会を増やし、そこからビジネスチャンスにつなげていく。そのきっかけが「集金」だ。各家庭に足を運び集金する。そのときにちょっとした情報を仕入れ、新たな預金を獲得したり、ローンの契約を結びつけたりしていた。

 しかしバブル経済が崩壊し、多くの金融機関はリストラを余儀なくされた。そして地域密着をうたう信用金庫・信用組合も経営効率の一環として、集金業務を廃止するところが増えていった。

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