『英国王のスピーチ』はざっくりいうと、王位継承権第2位の王子が名だたる専門家でも治せなかった吃音症の治療を平民の矯正師にお願いすることになって、タメ口に驚いたり型破りな治療法に戸惑ったり思わず本音を漏らして和んだりしているうちに王室がごたごたして王位に就いちゃって、戦争が始まるという演説を国民に向かって行う王としての重大なミッションを努力と友情で乗り越える話。
オスカー獲得は納得の優等生的な良質の映画。子供のころからの積もりに積もったコンプレックスを抱える、のちのジョージ6世ことヨーク公と売れない役者でもあるローグ、2人の人物の人間的な魅力と気の利いたやりとりが素晴しい。やんごとない身分の人々のうちわの事情だとか戴冠式の裏側だとかがかいま見られて、庶民的な野次馬根性も満足。ただ、監督賞はやっぱり『ソーシャル・ネットワーク』のフィンチャーに与えるべきだったんじゃ……と思ってしまってごめんねロイヤルハイネス。
ところで、アカデミー賞には時勢が影響することがままある。米国が大好きな民主化運動である一連の「ジャスミン革命」を後押しした「Facebook」素晴しい! って自画自賛するために『ソーシャル・ネットワーク』が下馬評を覆して作品賞をとるんじゃないか? というツイートをしたら「イスラエルが現状を喜んでいればね」と返されました(ハリウッドはユダヤ系が多い)……。改めて納得の『英国王のスピーチ』作品賞であります。
王位継承権第2位のヨーク公は子供のころからの吃音に悩んでいる。王室の一員としてスピーチの機会があるたびに彼のコンプレックスは大きくなるばかりだ。爵位付きの医者でも治せないこの病を治すため妻のエリザベスが探し当てたのが、オーストラリアからの移民で売れない役者のローグ。王位継承者の身分を明かしても動じないローグはヨーク公を特別扱いせずに治療する。吃音が心の病でもあることに気付いている彼はヨーク公の悩みに耳を傾け、やがて2人に身分を超えた友情が芽生える。そして、国王ジョージ5世が崩御、兄であるエドワード8世は恋のために王位を捨て、ヨーク公はジョージ6世として王位を継ぐことになる。
映画好きが高じて、コラムを書いたりもするイラストレーター。『WOWOWマガジン』『問題小説』『てぃんくる』などでイラストコラムを執筆。『Tokai Walker』の金子裕子さんのコラム「セレブ診療所」にコマ漫画を付けている。過去には『DVD&ビデオでーた』でビデオレビューのイラストコラム、『DVDでーた』で記者会見をレポするコラム『現場から櫻井輪子でした』を連載。
著書に『「へのへのもへじ」から始める 世界一カンタン! イラスト練習帳』がある。公式サイト「SakuraiWako'sめカラうりぼう」。
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