大震災後に必要なモノ、それは“情報”だ藤田正美の時事日想・特別編(2/3 ページ)

» 2011年03月24日 12時02分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

情報処理を早くし、効率よく動く

 もちろん、それだけ未曾有の大災害だったということであり、最も住民に近い存在である基礎自治体がなくなってしまった例もあるのだから仕方がないとも言える。しかし住民票のデータがクラウドなどできっちりバックアップされていたらどうだろう。いざというときは、そのデータを隣接する市町村や県などが使って住民への基本サービスが展開できたらこれほどの混乱はなかったかもしれない。

 避難所でも避難してきた人々の名前と住所を入力してお互いに交換できるようなデータベースが整備されていれば、肉親を求めて避難所を訪ね歩く人々の労力も軽くなるはずだ。行政当局としても正確な情報を把握する時間が大幅に短縮されるはずだし、人手の足りない自治体に他の自治体から来る応援部隊もやりやすくなるだろう。

 支援物資も同じである。災害が起きたらいつも問題になるのが支援物資だ。すでに基本的なパックのようなものがどこの自治体にも用意されていて、それが運ばれてくるのは分かりやすい。しかし震災直後から数日過ぎれば、避難所では個々のニーズが出てくる。乳幼児用のおむつがどれぐらい必要か、老人用の介護用品がどれぐらい必要か、常用している薬は何が必要かなどなど、それぞれの避難所の個別の要求は外からは推測できない。

 もしここにインターネットを使ってデータをやり取りできるような環境があれば、それこそ通常の物流ネットワークになる。およそ品物はコードがつけられて流通しているのだから、災害時にもそのコードを使えるようにしておけば、情報は流れやすい。

 今回の大地震では自衛隊や消防庁の活躍ぶりが目立った。とりわけ自衛隊は派遣の規模が過去最大ということもあったが、理由はそれだけではあるまい。彼らは、情報の流れ方が明確で、その分だけ行動も組織だってできる。生存者捜索に必要な道路の確保や避難者の救援、孤立した避難所への支援など、情報と行動力がないとできないところでは自衛隊の能力の高さが際立ったと思う。現地の災害対策本部が収集できる情報がもっと増え、なおかつその情報の処理がもっと早くできるようになれば、自衛隊だけでなく、地元消防や地元警察ももっと効率的に動けるようになるはずだ。

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