「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”」
東北関東大震災で被害を受けた被災地に、なかなか物資が届かないことが問題になっている。集積所には山積みになっているのに、肝心の避難所に届かない。自宅にいる被災者にはさらに届かない。理由はある意味で単純だ。どこでどのような物資が必要とされているのかが正確に把握されていない。そして場合によっては、集積されているところでどこに何があるのかが把握されていないからである。
現在、避難している人は約25万人(その数さえ正確ではない)とされ、それも介護が必要な人から乳児までさまざまだ。当然、必要とされるモノもさまざまである。被害を受けた直後は混乱するのも当然だ。スーパー、ガソリンスタンド、コンビニ、町の商店、病院などでモノが販売され、その情報が卸などを通じてメーカーに流れ、メーカーがモノを生産するとその情報が流れる。流通関係者がその情報をもっていれば、そこで消費者は行動を決めることができる。自分の欲しいモノがいつどのくらい入るのかが分かるからだ。
今回の大震災によって東北地方の太平洋岸を中心に情報網は一瞬にして大規模かつ広範囲に破壊された。道路や鉄道といった輸送網も同様にずたずたになったが、それは少しずつでも着実に回復する。緊急車や災害派遣車専用となっていた高速道路も、一般車両に開放された。通信網も復旧する。いまだに外部と連絡が取れないところは数少ない。
その中でいちばん復旧が遅れているのが「情報」そのものだと思う。死亡した人は9523人、家族から届け出があった行方不明者は1万6094人(いずれも3月23日現在)、その他に届け出がない行方不明者が万単位だという。すでに震災発生から2週間になろうというのに、この有様だ。およそ先進国では考えられないような事態だと言っていい。
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