日本のデザインが逆輸入されたマリメッコのフィンランド店(1/2 ページ)

» 2011年03月29日 14時45分 公開
[上條桂子,エキサイトイズム]
エキサイトイズム

エキサイトイズムとは?

「高い美意識と審美眼を持ち、本物を知った30代男性」に向けたライフスタイルのクオリティアップを提案する、インターネットメディアです。アート、デザイン、インテリアといった知的男性の好奇心、美意識に訴えるテーマを中心に情報発信しています。2002年11月スタート。

※この記事は、エキサイトイズムより転載しています。


 フィンランド生まれのライフスタイルブランド、マリメッコ。マイヤ・イソラの大きな花柄のUNIKKO(ウニッコ)や、幾何学模様が美しいKAIVO(カイヴォ)、脇坂克二氏の色鮮やかな車の柄BO BOO(ブ ブー)、ダイナミックな葉っぱのアンナ・ダニエルソンのBOTTNA(ボッツナ)など、柄をひと目見ただけで「あ、マリメッコ」と分かる。

 それほど日本にはマリメッコのファブリックの柄が浸透している。日本でも表参道に、マリメッコのオンリーショップが出来たときに駆けつけた人は少なくないだろう。かくいう私もオープンに駆けつけて、そそくさと小物やバッグを買い漁ったのを記憶している。

エキサイトイズム ヘルシンキのKamp GalleriaのMarikulma店

 そのマリメッコ表参道店の空間デザイン、この2月にオープンしたヘルシンキのKamp Galleria(カンプギャラリア)のMarikulma(マリクルマ)店、そしてフィンランド国内、ベルリンなど世界各地で展開するマリメッコの店舗デザインを手がけたのは、日本人建築家のima設計事務所だ。imaは、小林恭氏と小林マナ氏による建築設計事務所で、渋谷にあるセレクトショップ「デスペラード」や、イタリアの革小物ショップ「イル・ビゾンテ」などの設計を手がけている。

エキサイトイズム

 なぜ、フィンランドの国民的ブランドともいえるマリメッコが日本人建築家にグローバルのショップデザインを発注することになったのか、経緯を聞いた。最初にimaがマリメッコと関わることになったのは、2005年に青山スパイラルガーデンで開催された「marimekko マリメッコ」展。天井からダイナミックにファブリックを吊り下げて構成された、布の林や湖の中を回遊していくような空間は、ひと目で本国のデザインチームに気に入られたのだという。

 「スパイラルの展示を担当した当時の社長がキルスティ・パッカネン氏という個性的な人で、マリメッコのブランドを再生するのに尽力された方なんですが、彼女がすごく気に入ってくれたんです。なので、その後の日本の店舗設計時も、特に先方からのリクエストはなく、ほとんどお任せでした」(小林恭氏)

 マリメッコのブランドの説明をしておこう。1949年、ヴィリオ・ラティアが購入したテキスタイル会社のプリンテックスが前身。1951年、広告代理店に勤めていたヴィリオの妻、アルミとともにマリメッコを設立し、マイヤ・イソラを基幹デザイナーとしたコレクションを発表する。1980年代はビジネスも下降線を辿ることに。1991年、倒産寸前であったマリメッコの新オーナーにキルスティ・パッカネンが就任すると徐々にビジネスも復調。日本ではバッグやマイヤ・イソラのファブリックが若者層に人気を博している(『北欧デザイン』渡部千春・著より)。

エキサイトイズム

 また、日本でのマリメッコ事情について簡単に振り返っておく。日本でマリメッコの再評価が高まったのは2000年前後くらいだろうか。Casa BRUTUSの「北欧最終案内」が2002年発行だから、その時期だろう。感度の高いインテリア雑誌でマリメッコのファブリックが紹介された。いわゆる北欧ブームである。当時、マリメッコの輸入は複数の会社がバラバラに行っていたが、その後ルックがマリメッコのディストリビューターとなり、きちんと日本に紹介されることになった。

 「当時のフィンランドでのマリメッコは、素晴らしい商品があるのにきちんと整理整頓されていない状態でした。そこで僕たちはマリメッコの素晴らしい商品を整理し直し、カテゴリーごとにきちんと見せることを考えました。例えば料理が美味しそうに見えるお皿をデザインするように商品が引き立つ空間になるよう心がけました」(小林氏)

 そんな経緯を経て、日本の表参道店がオープンしたのが2006年。小林氏らが意識したのは、お客さんが商品に出合うためのゾーン作り。全体を見渡せるような空間作りではなく、次々に商品が目に飛び込んでくるようにレイヤー状に什器を配置したり、ファブリック、ファッション、バッグ、バス、寝具、キッチンなど多数あるアイテムを美しく整理できる什器を開発し、その機能をオブジェクトとしてとらえ空間に配置した。すると、もともと素晴らしい商品達が生き生きと目の前に見えてくるようになった。ショップ内を歩いているだけで、探す楽しみ回遊する楽しみのあるショップデザインとなったのだ。

エキサイトイズム

 マリメッコの店舗開発チームが来日し日本での主要都市のマリメッコ店舗を数店舗見て「フィンランドよりもマリメッコらしい店」という評価を受けて、グローバルのショップデザインを手がけることになったという。

       1|2 次のページへ

Copyright (C) 1997-2014 Excite Japan Co.,Ltd. All Rights Reserved.