人は仕事によって作られる――新社会人に贈る言葉(2/5 ページ)

» 2011年04月05日 08時00分 公開
[村山昇,INSIGHT NOW!]
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3人のレンガ積み

 ここで、訓話としてよく使われる「3人のレンガ積み」を紹介しましょう。

 ――――中世ヨーロッパのとある町。建設現場で働く3人の男がいた。そこを通りかかったある人が、彼らに「何をしているのか」と尋ねた。すると1番めの男は「レンガを積んでいる」と言った。次に2番めの男は「カネを稼いているのさ」と答えた。最後に3番めの男が答えて言うに、「町の大聖堂を作っているんだ!」と。

 1番めの男は、永遠に仕事を「作業」として単調に繰り返す生き方です。2番めの男は、仕事を「稼業」としてとらえる。彼の頭の中にあるのは常に「もっと割りのいい仕事はないか」でしょう。そして3番めの男は、仕事を「使命」として感じてやっています。彼の働く意識は、大聖堂建設のため町のためという大目的に向いていて、その答えたひと言に快活な精神の様子が表れています。

 日々月々やっていく仕事を、単なる繰り返しの「作業」ととらえるのか、給料をもらうためだけの「稼業」ととらえるのか、それとも夢や志といったものにつなげていくのか―――各人のこの意識の違いは目には見えませんが、5年、10年、20年経つと、はっきりと人生模様そして人間性として外見に表れる形で差がついてきます。コワイものですよ。

 どうかみなさんは、みずからの仕事を大きな目的・意義につなげる意識を持ち続けてください。そうすれば仕事というのは、生活の糧を稼ぐ「収入機会」であるばかりでなく、自分の可能性を開いてくれる「成長機会」となり、何かを成し遂げることによって味わう「感動機会」となり、さまざまな人と出会える「触発機会」となり、学校では教われないことを身につける「学習機会」となり、社会の役に立てる「貢献機会」となり、あわよくば一攫千金を手にすることもある「財成機会」となります。

 仕事は、実に機会(チャンス)にあふれているのです。このような機会の固まりを、お金(給料)をもらいながら得られるのですから、会社とはなんともありがたい場所ではありませんか。

 社会人の先輩の一部には、仕事がつまらなくなると「仕事は仕事、趣味は趣味」と割り切り、「趣味で人生楽しめばいいや」という人がいます。しかしこれは少し残念な姿勢です。趣味を楽しむことが悪いというのではありません(私も自分の趣味を大いに楽しんでいます)。仕事という大切な機会を十全に生かそうとしない姿勢が残念なのです。

 作家の村上龍さんは著書『無趣味のすすめ』でこう言っています―――「趣味の世界には、自分を脅かすものがない代わりに、人生を揺るがすような出会いも発見もない。心を震わせ、精神をエクスパンドするような、失望も歓喜も興奮もない。真の達成感や充実感は、多大なコストとリスクを伴った作業の中にあり、常に失意や絶望と隣り合わせに存在している」と。

 みなさんはもう社会人になった。これからは仕事があなたを成長させてくれるのです。「仕事とは人格の陶冶である」と心得てください。

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