震災後の円安、その背景には何があるの?南はるなのFXのヒミツ(2/3 ページ)

» 2011年04月21日 08時00分 公開
[南はるな,Business Media 誠]

いつ、どこが先に利上げをするのか

 今回取り上げる円安の背景には、各国の政策金利を含めた金融対策が関係しています。現状、欧米では景気対策として行ってきた金融緩和が、一定の役割を終えたとして、終了への出口を探っている一方で、日本は震災からの復興のために金融緩和を行っているという方向感の違いがあります。

 各国の政策金利は為替市場に影響を及ぼす大きな要因となりますので、少しおさらいをします。政策金利とは、中央銀行が市中銀行(一般の銀行)に融資する際の金利を指していて、中央銀行の金融政策によって決められています。一般的には、好景気時には景気の過熱によるインフレを抑制しなければいけません。そのため、政策金利を高く設定すると預貯金やローンの金利が上がり、通貨の流通を抑える効果があります。

 一方、景気が減退しているときには企業の資金調達を容易にして投資や消費を促すため、政策金利を低くし、通貨の流通を促します。投資家にとっては、金利の高い通貨を保有すればそれだけ資産が増えることになるので、ものすごく単純に言えば、金利が上がった通貨は買われ、逆に金利が下がったら売られる傾向にあります。そのため、政策金利の変化や見通しに関するニュースが出れば、市場はそれに反応して為替レートが変動しやすくなるのです。

 4月7日には、ECB(欧州中央銀行)が政策金利を過去最低の1%から25bp(ベーシスポイント)引き上げて1.25%へ政策金利の利上げを決定しました。トリシェ総裁は「必要ならば追加利上げの可能性」もあることを示唆しました。ここで重要なのは、上げ幅そのものよりも、市場の予想に対してどれだけ差があり、サプライズになるかという点です。そういう意味では、今回の利上げは事前から予想されていたこともあり、大きな変動要因にはなりませんでした。注目すべきは、さらなる利上げが「いつ」「どのように」実施されるかという点。今後、市場の予想を裏切るような展開になれば、大きく相場が動く要因になるでしょう。

 また、米国も昨年から実施されている量的緩和の第2弾が6月に終了するとの見方が市場で有力視されています。そんな中、3月26日にはプロッサー・フィラデルフィアFRB(連邦準備制度理事会)総裁が「出口戦略はそう遠くない将来に着手する必要がある。利上げとともに資産売却計画を提示すべき」と発言したほか、FRB高官による出口政策への積極的な発言が相次いでいて、ドル買いを支持する要因となっています。

 日本はといえば、東日本大震災からの復興のため、日銀が過去最大規模の資金提供を実施しており、3月14日の金融政策決定会合では資産買い入れなどの基金をこれまでの5兆円に加えて、あらたに5兆円を投入することを決定。地震や原発問題が長期化する見込みであることから、日本が政策金利を利上げするまでには相当な時間を要するものと見られ、欧米の通貨との金利差が広がっていくことが予想されます。こうしたことから、利上げ期待の高まる通貨を買い、同時に日本円を売るという投資家の行動につながっていると考えられます。

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