ケータイをやめ、これからスマートフォンを買うのは誰か?新連載・遠藤諭の「コンテンツ消費とデジタル」論(1/3 ページ)

» 2011年05月02日 08時00分 公開
[遠藤 諭,アスキー総合研究所]

「遠藤諭の『コンテンツ消費とデジタル』論」とは?

 アスキー総合研究所所長の遠藤諭が、コンテンツ消費とデジタルについてお届けします。本やディスクなど、中身とパッケージが不可分の時代と異なり、ネット時代にはコンテンツは物理的な重さを持たない「0(ゼロ)グラム」なのです。

 本記事は、アスキー総合研究所の所長コラム「0(ゼロ)グラムへようこそ」にて4月12日に掲載されたものです。遠藤氏の最新コラムはアスキー総合研究所で読むことができます。


 情報家電、デジタル機器、ハイテク商品というのは、どんなときに買われるのだろうか? 購入を阻んでいるのは「値段が高い」ことや「習得の難しさ」だ。一方で購入する理由は、それによって得られる「利便性」や「満足感」だろう。これらの要素の心理的な距離が、時間の経過とともに接近してきて交差するあたりで、購買行動は起こる。

 心の中に“X”字形のグラフがあって(縦軸は心理的なもので、横軸は時間)、ピョンと跳び越えて早めに買ったり、ずっと我慢していたものをようやく買ったりしている(図1)。性能や使いやすさが年々向上して、お値段が相対的に下がってくるのがハイテク機器の特徴で、いわゆる「ムーアの法則」が独特の市場原理を作り出している。

図1 ハイテク商品購買のX字グラフ。時間とともに「価格」「習得の難しさ」は下がり、「実利」や「満足感」は上がってくる。その交差する付近が「旬」

若い人たちの間では、2〜3年でスマートフォンが当たり前になる

 そんな機器の中でいま売れているのが、「スマートフォン」である。量販店の販売データを集計しているBCNによると、2010年12月には、携帯電話販売台数の48%がスマートフォンだったそうだ。2011年2月でも、スマートフォンが44%を占めたという。

 国内の携帯電話(PHSを含む)の契約数はざっと1億2300万台。年間の端末出荷台数は約3500万台である。そのうちの半数がスマートフォンという比率が今後続いたとしても、全体をひっくり返すには何年かかかる計算になる。だが、若い人たちの間では、2〜3年でスマートフォンが“当たり前”になる可能性が高い。一部のユーザー層が、“X”字形のグラフの交差点付近に差しかかってきている。

 「若い人たち」と書いたのは、いまの20代においては、メディアの利用スタイルが大きく変化してきているからだ。

ソーシャルメディア利用率が高い20代

 アスキー総研では、今年で2回目となる1万人調査「MCS(メディア&コンテンツ・サーベイ) 2011」の提供を開始している。これは、総務省の「通信利用動向調査」から割り出したインターネットユーザーの人口構成比・地域分布に沿うように抽出した1万人のパネルに対して、メディアの利用状況やコンテンツの消費状況を詳しく聞いたものだ。このMCSの集計結果で、我々の目を最も引いたのが、現在の20代のライフスタイルだったのだ。

 例えば、地上波テレビを「視聴していない」と答えた人が、20代男性では13.5%もいる。1日の視聴時間を「5分未満」と答えた人も合わせれば19.4%と、実に5人に1人の割合となる。そもそもテレビを持っていないという話もあるから、当然とも思えるが。その分、ネット動画の視聴時間(図2)を調べると、20代男性は1日平均18.5分と、他世代より突出してネット動画を視聴している。これはネット動画を利用していない人も含めた平均値で、利用している20代男性のみに限定すると、実に1日平均62.8分もネット動画を見ている。

図2 ネット動画の平均視聴時間。PCやスマートフォンなど、各種機器から1日に何分ネット動画を視聴しているのかを聞いたところ、20代男性は18.5分、20代女性も10.2分と、他の世代よりも長時間ネット動画に接していることが分かる。
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