米国経済には3つの問題がある藤田正美の時事日想(2/2 ページ)

» 2011年05月09日 08時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]
前のページへ 1|2       

若者の失業率が高い

 とりわけ若者の失業率が高い(ちなみに日本も若者の失業率が高くなる傾向にある)。若者の失業は長期にわたって影響する。こうした雇用の問題は、グローバリゼーションやIT革命なども一因だが、米国が黒人の若者を労働市場から締め出してきたことも大きな理由だ。

 こうした若者に仕事を与えることができなければ、財政的にも社会的にも負担が大きい。就業不能者に対する社会保障費は1200億ドル(9兆6000億円)とGDP(国内総生産)の1%以上に及び、しかも急速に増えている(日本の場合、GDPの1%と言えば防衛費の目安である)。さらに男性の失業者の増加は、結婚率の低下や家族の絆が弱まることにもつながっている。

 米国はマクロ経済政策を立て直さなければならない。そのためには、まず財政や通貨の安定性を取り戻すべく中期的に目標を立てることが必要だ。もちろんその際に短期的に急激な引き締めはしないようにすることが重要である。さらに企業が雇用を増やすインセンティブになるよう、職業訓練を強化する必要がある。その点では米国は、欧州に学ぶことができる。例えばオランダは、就業不能保険の見直しではいい先例となっている。非熟練男性の職業が減らないようにすることも大事だが、教育をさらに改革することも必要だ。

日本経済にとってのリスク

 以上が冒頭の記事のさわりである。日本の場合、黒人の若者の失業率が異常に高いというような現象はないが、若年失業率が高くなっていることや、長年にわたって単純労働に就いてしまうと将来的な展望が描きにくくなってしまうというような問題は共通かもしれない。

 こうしたことが米国経済の将来展望を蝕んでいるとすれば、それは日本経済にとって将来のリスクとなる。米国は日本にとって最大の貿易相手国ではないとはいえ、中国が米国に輸出している物に含まれる日本製品を考えれば、決してそのウエイトは小さくないはずである。その米国が構造的失業という慢性病にかかっているのなら、その影響はやがて日本に及ぶ。

 当面は震災からの復興で手一杯ではあるが、復興の方向が定まったら、中長期的な展望を見直すことが必要かもしれない。もっとも、そうしたことが苦手なのは日本の政治家も米国と同じ。あるいはもっとひどいかもしれないというのが、情けないけれどもわれわれの悩みだ。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.