官房長官の債権放棄発言で一時大幅安清水洋介の「日々是相場」夕刊(2/2 ページ)

» 2011年05月13日 16時06分 公開
[清水洋介,Business Media 誠]
前のページへ 1|2       

明日の相場雑感

 米国株が堅調、為替も落ち着いており、先物・オプションのSQ(特別清算指数)算出に絡む買いも入り、買い先行となりました。ただ、週末と言うことで手仕舞い売りが出易いところで、中国の利上げの影響を懸念する動き、そして原子力発電所事故がこれまで報告されていたよりも酷い状況であったことが判明したことなどを受けて売りが嵩み大幅安となりました。電力会社の補償問題についての官房長官のコメントから金融株への懸念も強まり、為替も円高方向に振れたこともあり、一時指数は大きな下げとなりました。

 原子力発電所事故の新たな悪材料が出たことに加え、補償問題の迷走など政府の対応は相変わらず何をしているのかもわからないような状況で、誰がリーダーシップをとって、原子力発電所問題も、復興問題もどのような解決をしたいのか全く方向感が見られません。政策の方向感が見られないなかで、上場企業に今期業績の見通しを示せという方が無理があるのではないかと思います。電力会社の補償ひとつとっても増税や電力料金の引き上げがどう着地するのかも見えず、電力供給も行き当たりばったりと言う感じです。

 昨日の決算発表時にも自動車大手の社長はきっぱりと10月に全世界でフル生産に戻ると言いきって、株価が大きく上昇しましたが、このように全くできないことを無理を言うことはありませんが、ある程度めどが立つものであればきっぱりと言い切るということもリーダーにとって必要ではないかと思います。原子力発電所の停止にしても、唐突に行うのではなく、今後の方針、供給の方針を示したうえで言うべきであるし、原子力発電所事故の状況も今後の対策などを含めて現状をしっかりと報告するなどの工夫も必要でしょう。

 ただ、不安を煽るだけの報告や資金めども方針も決まらないうちに補償問題を急がせて見たり、今の日本で何が起こっていて何をしたいのか全く見えない状況ではないかと思います。ですから株式市場も何の方針も株価の方向性も見られず、行き当たりばったりに材料や噂に振り回されて、目先の値動きだけを追いながら右往左往することになるのでしょう。政府がしっかりとしないのであれば、政策の影響が少なく、しっかりとしたビジネスモデルを持っている企業への投資が良いのかもしれません。

清水洋介氏のプロフィール

慶應義塾大学法学部卒。1983年に大和證券に入社、以来、マネックス証券、リテラ・クレア証券で相場情報などに携わってきた。営業やディーラーの経験を基に、より実戦に近い形でのテクニカル分析、市場分析に精通している。日本証券アナリスト協会検定会員、日本テクニカル協会会員。著書に『江戸の賢人に学ぶ相場の「極意」 』 (パンローリング)、『儲かる株価チャート集中セミナー』(ナツメ社)。清水洋介の「株式投資の羅針盤


※掲載されている内容は、コメント作成時における筆者の見解・予測であり、有価証券の価格の上昇または下落について断定的判断を提供するものではありません。
前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.