組み立て作業が終了すると、次のプロセスではさまざまな試験が待ち受けている。旅客機の試験は、単に“飛ばす”だけではない。考えられるさまざまな過酷条件を想定してのテストが繰り返されることになる。
A380のテストでは、機体後方部を滑走路に着けたまま最低速度で離陸を行う「低速離陸テスト」や、南米の高地で行われた「高高度テスト」、世界各地の既存の空港に着陸して適性を判断する「空港適合性テスト」、マイナス30度の極寒の中でエンジン性能などを確かめる「寒中テスト」などに多くの時間が費やされた。
ほかに実際に実施されたテスト項目リストを見ると、砂漠地帯を舞台にした「猛暑テスト」や、氷の生成雲の中で行われた「着氷テスト」などもそこに含まれている。
また地上では、強度試験や疲労試験、さらに満席の状態で緊急時に乗客全員が90秒以内で脱出を完了できることを実証する試験なども進められた。
そして最終段階では、EASA(欧州航空安全庁)とFAA(米連邦航空局)から型式証明を取得するための「技術路線実証飛行」というテストフライトが義務付けられている。
技術路線実証飛行では、エアライン各社が航空機を受領したあとに行う定期便運航とまったく同じ条件下で、EASAとFAAのチェッカー(査察)パイロットが同乗して150時間以上連続したフライトを実施。その運航状況や着陸した空港でのライン整備状況、ボーディングブリッジの接合具合や機内清掃、さらに次のフライトに向けての機内食の積み込みや給油などのグランドハンドリングがきちんと行えるかどうかのチェック・実証を経て、旅客機としての正式な型式証明が授与されるのだ。
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