ネトゲ婚はアリ?――廃人同士で結婚してみた野島美保の“仮想世界”のビジネスデザイン(2/2 ページ)

» 2011年05月24日 08時00分 公開
[野島美保,Business Media 誠]
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結婚に踏み切ったわけ

 婚活では、ルックス・年齢・職業・年収というステータスが符号化される。これらは、才能や努力によって得たものもあれば、ただ運で持っているものもある。ともあれ、こうした人物評価は、過去の活動軌跡を表すだけでなく、その人の将来予測に使われる。将来のリスクを減らすことが幸せにつながると考えるならば、こうした条件を徹底的に洗い出すことになる。

 当時登録していたお見合いサイトからは、毎週のように釣書(身上書)が送られてきた。しかし、誰かを選ぶことができず、その情報量にただ圧倒されて終わってしまった。

 一方、ネットの出会いは現実世界での素性が分からないというリスクがある。ネットでは自分を詐称する人が多いから危険だと、友人知人からよく忠告された。しかし、現実世界のステータスを知ることが100%の素性、すなわちその人自身を表しているのかというと、それも違う気がした。

 リスク回避という考え方では、相手に求める条件が色々と出てくるが、文句の付けようのない人などそうそういるものではない。理想でないのはお互いさまだ。だいたい、ゲーム世界で格好良いということは、ゲームに時間を費やす廃人だということだ。実際、その後2人揃って廃人問題に悩むことになった(参照記事「ネトゲ廃人を脱するための3カ条」)。

 周りからは心配されたり反対されたりしたが、自分の人生なのだから自分さえ納得できればよいと、振り切って決断した。たとえ失敗になったとしても、この経験が仮想世界研究の糧になればよいとも思った。研究者として生きたいのならば、研究対象に人生を投じてもよいだろう。

 それが正解だったのかは最期まで生きてみないと分からないが、大いなる勘違いをしたことは恩恵だったのだと思う。

野島美保(のじま・みほ)

成蹊大学経済学部教授。専門は経営情報論。1995年に東京大学経済学部卒業後、監査法人勤務を経て、東京大学大学院経済学研究科に進学。Webサービスの萌芽期にあたる院生時代、EC研究をするかたわら、夜間はオンラインゲーム世界に住みこみ、研究室の床で寝袋生活を送る。ゲーム廃人と言われたので、あくまで研究をしているフリをするため、ゲームビジネス研究を始めるも、今ではこちらが本業となり、オンラインゲームや仮想世界など、最先端のEビジネスを論じている。しかし、論文を書く前にいちいちゲームをするので、執筆が遅くなるのが難点。著書に『人はなぜ形のないものを買うのか 仮想世界のビジネスモデル』(NTT出版)。

公式Webサイト:Nojima's Web site


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