元朝日の高成田氏に聞く、なぜ震災で親を亡くした子供を助けるのか相場英雄の時事日想(3/4 ページ)

» 2011年05月26日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

お金が集まってくると怖い

――被災地の学校への呼びかけは?

 今年6月1日から、各学校長に案内を出し、親御さんを亡くしたという申請があれば、支給対象となる子供を選定していく予定だ。月額2万円で、送金手数料を節約するため3カ月に1回の振り込みとなる。1年間に24万円、5年間で120万円を送る予定だ。

 現段階(5月18日)では700万円が集まった(筆者注=本稿執筆段階)。まだ6人分だ。できれば6000万円で50人に支援を行いたい。7月には10人分、1200万円まではもっていきたいと考えている。

 近いうちに申請用の書式を作り、募集を始める。募金額が大きくなれば、各県の教育委員会にパンフレットを送り、各学校に知らせていただこうと思っている。基本的に、子供たちが支援を受ける側なので、障害は少ないのではないかと考えている。

 ただ、子供たちのプライバシーをどのように守るかという点は、厳密にしていこうと思う。いざ支援実行となった際、相手の反応も知りたいので、子供を匿名にした上で、作文などをWebサイト上に掲示するような仕組みを作り、そこで相互交流が図れるようにしたい。

――事務の手間は?

 今のところ、資金を募っているだけなので、手間はかかっていない。分配の段階となったときは、主に東北の教育関係者らを集めて選定委員会を開く。

 自分でやってみて、お金が集まってくると怖いと感じる。どうやって自分自身を担保するか、(透明性を)保証するかという点がある。組織の中、外部に対して、透明性を確保するのが難しいということが分かった。市民運動をしている友人に尋ねたら、不正が発覚して失う社会的評価が現在の評価を上回る場合、人は不正に走らないそうだ。

 今は石巻市の税理士事務所に依頼し、銀行口座の残高証明に基づいて、毎月収支報告署と貸借対照表を出し、監査してもらっている。年1回ではなく、月1回の監査という事例を“保証”にしようと思っている。

 現在、こども未来基金は仙台の人権NPOワールドオープンハートに事務局を置き、代表者の方に通帳を預け、印鑑は私が保有し、別々に管理している。残高が記載された通帳を見たら、緊張して胃が痛くなった。お金に縁のない世界に過ごしてきたことを実感した。

 私自身、今までNPOの取材を行ってきたし、支援もしてきたが、実際にやってみると中々大変だなというのが率直な感想だ。

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