コラム
» 2011年06月07日 07時54分 公開

松田雅央の時事日想:この夏には間に合わないが、日本の建物は断熱に力を入れるべき (2/3)

[松田雅央,Business Media 誠]

省エネ基準2009

 建築物の省エネを促進するドイツの法律は、省エネルギー基準(EnEV。以後、省エネ基準)と呼ばれる。最初に制定された1976年当時は断熱基準と暖房機器基準に別れていたが、2002年からは名称を少し変えた上で統合され2004年、2007年、2009年に改定されている。省エネ基準はドイツの建築法の一部をなし、新築の建物と大規模に改修(床面積10%以上)する建築物が満たすべきエネルギー性能を定めたものだ。

 省エネ基準2002以降は暖房に必要な1次エネルギー(電力・熱・動力に使われるすべてのエネルギー)消費の全体像をとらえ、それをどう削減するかに焦点を当てている。2007年からは新築の建物と大規模に改修する建物のエネルギー性能を示すエネルギー証明の取得が義務付けられた(関連記事)

 2009年10月に施行された現行の省エネ基準2009は省エネ基準2007を30%厳しく設定している。この基準レベルは、いわゆる省エネルギーハウスに準じるものだ。

建物の省エネルギー基準の推移

建物の省エネルギー法制定(EnEG)1976年

第1次断熱基準 1978年:第1次暖房機器基準 1978/82年

第2次断熱基準 1985年:第2次暖房機器基準 1989年

第3次断熱基準 1995年:第3次暖房機器基準 1994/98年

EnEV 2002−1次エネルギー消費節約の考え方を導入

EnEV 2004−細部の改定

EnEV 2007−エネルギーパスの導入

EnEV 2009−1次エネルギー消費の30%削減

EnEV 2012/2015−1次エネルギー消費削減の厳格化

EnEV 2019−パッシブハウスをスタンダードに

(出典:カールスルーエ市エネルギー・水道公社)

基準内容

 以下、図1と表1に沿って新築の省エネ基準の考え方を説明しよう。

 屋根、外壁、地下室の壁、窓は、それぞれの材質や構造により異なった熱の通しやすさを持っている。これをU値※という係数で表し、U値は小さければ小さいほど熱の透過が少ない、つまり断熱性が高いことを意味する。例えばU値0.20〜0.25ならば、15〜20センチ厚の発泡スチロールやグラスウールの断熱性能に相当する。屋根、外壁、地下室の壁、窓のU値に基準値をもうけ、改定のたび値は厳しくなっている。

※U値:U-Wert=熱損失係数。単位はW/m2K(K=ケルビン)

 最も高い断熱性が求められるのは窓だ。省エネ基準2009までは断熱性能の高い2重ガラスで十分だったが、省エネ基準2012/15以降は3重ガラスが必要となるだろう。

 次に厳しいのは屋根。冬の暖房熱を外に漏らさないことはもちろん、夏の暑さを屋内に通さないためにも高い断熱性が求められる。

 建物全体の機密性が高くなると、今度は換気の問題が発生する。空気の乾燥しているドイツでも、機密性の高い家は換気に気をつけないとすぐカビが生える。単なる換気扇では熱を捨てるようなものだから熱交換式の換気扇が必要となり、そこでも壁と同様の断熱性が求められる。

省エネ基準2009に準じた新築の例。数字は断熱性能を示すU値。太陽熱温水器の設置が標準化されている(図1、クリックして拡大)

表1:新築住宅に求められるU値(単位:W/m2K)

省エネ基準2002 省エネ基準2009 省エネ基準2012/15 パッシブハウス
屋根 0.20.〜0.40 0.15.〜0.25 0.10.〜0.20 < 0.10
外壁 0.25.〜0.50 0.20.〜0.30 0.15.〜0.25 < 0.15
地下室の壁 0.30.〜0.40 0.25.〜0.35 0.20.〜0.30 < 0.15
1.2.〜1.4 1.1.〜1.3 0.8.〜1.3 < 0.8
年間の暖房エネルギー消費量の目安 < 70 kWh/平方メートル < 50 kWh/平方メートル < 15 kWh/平方メートル
一重ガラスと断熱二重ガラスの断熱効果比較。矢印は室内から屋外への熱の透過を表している。例えば外気マイナス10度で同じように暖房した場合、1重ガラスなら室内温度は1度だが、断熱2重ガラスならば16度に保てる。図の窓枠の材質は木材。表面の防水に気をつければアルミ製やプラスチック製の窓枠同様長持ちする。断熱2重ガラスの窓枠には機密性を保つため、開閉部分にパッキングがはめられている(クリックして拡大、出典:カールスルーエ市環境局の資料)

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