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※この記事は、エキサイトイズムより転載しています。
東京・六本木の森美術館で「フレンチ・ウィンドウ展」が開催中だ。これはフランスのアートコレクター団体ADIAFが主宰するマルセル・デュシャン賞10周年を記念して開催されているもの。あまたあるアート関係の賞の中でも、コレクターの視点で選ばれる賞というのは類を見ない。
マルセル・デュシャン賞の基準は、フランス在住であること。国籍不問でもっともその年に革新的で、フランスのアート界を牽引していくようなアーティストに捧げられる。ジャンルも絵画、写真、映像、彫刻、インスタレーションと幅広い。
「フレンチ・ウィンドウ展」は、デュシャンの代表作「フレッシュ・ウィドウ」のもじりだ。この作品はレディメイド(既製品)シリーズの1つ。ガラスケースに入れ大事そうに置いてあるのは、住宅用の窓枠「フレンチ・ウィンドウ」と呼ばれるもの。観音開きと言えば分かりやすいだろうか。まあ、ただの窓枠である。これは、デュシャン特有の言葉遊びの1つ。「フレッシュ・ウィドウ(なりたての未亡人)」という名を冠されて、窓が黒く塗られたフランス窓を見て人は何を思うだろうか。
「FRENCH WINDOW」から「N=虚無」を抜いたものが「FRESH WIDOW」(ちょっと綴りは違うけど)という解釈をしている人もいた。どちらにせよ、単なる窓枠の名前を変えただけでこんなにも飛躍的にイメージが拡がるというのが痛感できる作品である。
そんな形で「フレンチ・ウィンドウ展」では、世界一有名な便器であろうデュシャンの作品「泉」を始め、「三つの停止原器」「ヴァリーズ」「瓶乾燥機」など、全12点のデュシャン作品の部屋「デュシャンの窓」から始まり、「窓からの眺め」「時空の窓」「精神(こころ)の窓」「窓の内側」とデュシャン賞の受賞作家の作品をテーマ別に構成し、新しい思考の扉となるいくつもの「窓」がインストールされている。
ヴァレリー・ジューヴはサン=エティエンヌ生まれでパリで活動しているアーティスト。「コンポジションNo.1」は、ほぼ同時期に撮られたいろんな場所の壁と、1人の女性の写真で1つの作品が構成されている。それ以外に何も情報は記されていない。
そこにある石やコンクリート、レンガの壁はどこの場所のものかもよく分からないが、雨や風にさらされてきたのだろう、とにかく古そうだ。作っては補修され作っては補修され、部分的に崩れ、違う素材であてがわれている。
物悲しそうにも見えるが、左上で高層ビルをバックに空を見上げている女性の表情は清々しい。壁はそれまで何に出合ってきたのか。1つの壁から広がる想像も果てしないが、それが複数構成され、さらに「人」が加わることで意味のレイヤーは増していく。
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