部屋中の壁に張り巡らされたのは、リシャール・フォーゲの影絵のような作品。とはいっても、どこか見たことのあるフォルム……。
これらは、歴史上の彫刻作品を独自の視点で考察し、シルエットにしたもの。デュシャンの「パリの空気50cc」やドガの「14歳の小さな踊り子」などがある。アイコン化されてしまった名彫刻は、すごく薄っぺらいもののように見える半面、ひと目見てそれと分かる圧倒的な強さをも持ち合わせている。
パリ生まれでパリで活動しているクロード・クロスキーは、雑誌「Purple」の初代編集長としても知られる人物。知的なアイロニー交えて日常の物事を考察する、その視点は鮮やか。「フラット・ワールド」は、展示室にドンと大きな丸いテーブルが置かれ、その上に航空写真のA4プリントのようなものが端から端まで敷き詰められている。
どうやら手に取っていいらしい。シートには、地球の正反対に位置する2地点の航空写真が印刷されているのだ。これを見て私はすぐにSF好きの知人が話をしていた、エドウィン・アボット・アボットの『多次元・平面国〜ペチャンコ世界の十人たち〜』に登場するフラットランドを思い出した。本は未読なのだが、フラットランドという言葉は強烈な印象として脳裏に残った。しかし、ガリレオ・ガリレイ以前は誰もが自由な発想で、いま自分たちが立っている地球について想像を巡らせていたはずである。もし地球がペターンと広がる平面だったら……。そこから広がるイマジネーションは果てしない。
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