なぜ会社員は“クビ宣告”を跳ね返せないのか吉田典史の時事日想(3/5 ページ)

» 2011年06月24日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

リストラを跳ね返すのは難しい

 ここで考えるべきことがある。「私は辞めません」と言えば、その場はなんとかなる。しかし、その後も「辞めるように」と迫ってくる可能性は高い。リストラは通常、社長をはじめ、役員らのコンセンサスのうえで進められるもの。メインバンク、社内の労働組合などに根回しをし、段階的に進める会社もある。つまり、単なる思いつきではしていないのだ。

 私の観察では、1人の社員がここまで組織的なリストラを跳ね返すのは難しい。これを踏まえると、どこかのタイミングで辞めざるを得なくなることは理解しておくべきだろう。この15年ほど、リストラの取材をしてきた。狙われた社員が法の場(裁判や労組の団体交渉など)で会社に非を認めさせたとしても、それ以降も職場に残り、一定のペースで昇格し、きちんとした扱いを受けた者を私は知らない。

 そのほとんどが職場に残ってもさらなる閑職に追いやられたり、皆が無視をしたりする状況に陥り、数年以内に退職をしていく。この場合は本人の意思で自発的に辞めたことになる。会社の狙いは「自発的に辞めた」という事実を作ること。「私たちは解雇をしていません」と言いたいのである。

 (2)の「上司と激しくぶつかったとき」は、状況が変わる。その理由は「上司との確執」が原因であるからだ。つまり、役員たちはそのことを知らない。ただし、私見であるが、これは社員数で言えば1000人以上クラスの会社に言えることだ。それ以下の規模となると、役員らの耳に入る可能性がある。また、あえて上層部に報告をする上司もいるかもしれない。

 一般的には、上司とだけのトラブルならば、異動になればその部下は会社に残れる。逆に言えば、上司がその部下をどうしても辞めさせたい場合は、「自分との確執」ではなく、「部署のすべての社員から嫌われている」という方向に話を持っていくことが目立つ。

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