冠水、悪臭、ハエ――震災から3カ月、被害が拡大している現実東日本大震災ルポ・被災地を歩く(4/5 ページ)

» 2011年06月25日 10時00分 公開
[渋井哲也,Business Media 誠]

石灰を撒いても虫が出る

 また、近くに住む女性も、「家が曲がっている。廊下を歩いただけでも分かる。大工さんに頼もうと思って、見てもらったことがあった。でも、『これは直していいのかな?』と言うくらいなんです。基礎の部分が割れているから。これまで屋根からは雨漏りしたこともないのに……。あと、虫が出ています。うちは床下浸水だけど、石灰を撒いてもらいました。それでも、虫は出て来ている。蚊みたいな虫も出て来たが、あれは蚊ではない(と思う)。人を刺すんです」

 市の対応への不満を口にする。「もうノイローゼになってしまいます。市でもなかなか(要望を)受けつけない。熱も40度になるし、目が赤くなる。それでも市に行ったんです。昨日、ようやく市から建築士が見にきた。だけど、サッと見ただけ。どこまで見ているのか……大工さんはちゃんと見てくれてたのに。バカにしているんじゃないかと思うくらいですよ。本当に、朝晩、悩まされてます。また14日に大潮があるんですが、ようやく昨日から堤防の工事が始まりました。地盤沈下のために冠水するので、車も近くには置けない。もう少し(市に)早く対応してほしい」

新月の大潮、満月の大潮が不安

 堤防の工事を見にきたという阿部逸朗さんは、「新月の大潮が終わり、満月の大潮がくる。これがいつまで続くのか」とため息をつく。

家の前地区の水没状況について話す阿部逸朗さん。後ろの電柱が傾いている(6月8日)

 「地震の時は、排水溝から水が吹き上がって来た。80センチぐらいでしょうか。さらに砂が出て来ていた。液状化でしょうね。それによって地盤沈下です。ただ、全体的に下がったので、家は傾かなかった。だからこそ、何でもないように見えてしまう。判定が難しいと思う。毎日のこうした生活は困る。修理を頼んでも、こうしたところには来ない。仮設住宅が優先で、後回しになる。だから遠慮しているけれど、かえって不満がたまる。

 家の前まで冠水してしまうんです。津波は家の中まで入りましたが、冠水は毎日のこと。しかも1日2回ですからね。生活の影響は大きいですよ。マンホールからも水が噴き出すが、下水の汚水も混ざっている。ヘドロもまだあるので、病気も心配だ」

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.