地域熱供給の例として筆者の住むカールスルーエ市のエネルギー・水道公社が運営する地域熱供給を見てみる。
人口約28万の同市では市街地にある2万3000軒の住宅と、1200カ所の工場・事務所・公共施設が地域熱供給システムに接続している。約20気圧で送り出された75〜130度の温水は、消費側で熱交換され低温水となり、また戻ってくる。断熱材に覆われた全長150キロメートルの配管が、ガス管と同様に市街地を網羅している。
まずは1992年にライン川港湾の大型火力発電所から熱供給が始まり、2010年からは石油コンビナートも供給側としてシステムに組み込まれた。
消費側は暖房・給湯に使用した熱量分の料金(1KWhあたり5セント〈4円〉)と月々の基本料金(7ユーロ:約800円)をK公社に支払う。平均的な世帯で年間850ユーロ(約9万7000円)程度の負担となり、これは灯油を使用する暖房・給湯費用よりもかなり安い。経済性だけでなく、各建物に個別のボイラーを設置しなくてよいためスペースの節約にもなる。
他方、火力発電所やコンビナートにとっては消費者が熱を使えば使うほど都合がいい。戻ってくる水の温度が低いほど冷却効率が高まり省エネになるからだ。また、廃熱は本来、費用をかけて処理(放出)しなければならないゴミだから、それが売れれば願ったりかなったりだ。
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