誕生から27年、「タカラcanチューハイ」はこう生まれたコンビニ、ヒット商品の理由(2/2 ページ)

» 2011年07月05日 08時00分 公開
[笠井清志,Business Media 誠]
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ポイントは「辛口」

 こうしたチューハイブームを受けて、宝酒造では1983年1月に「缶入りチューハイ商品化プロジェクト」がスタートした。

 商品開発のポイントとして、筆者は「辛口」というジャンルを切り開いたことが重要だと考えている。同社が行った消費者飲用実態調査で、食事時にチューハイが飲まれていると判明。そのため、「ご飯を食べながらでも飲みやすい」ということがキーとなり、甘みのない「辛口チューハイ」というカテゴリーの商品が開発されることとなったのだ。

 現在、チューハイは果汁入りを中心に人気を集めているが、それはお酒というよりは“コミュニケーションツール”として飲まれている意味合いも強い。それとは違い、1984年に発売された「辛口」の「タカラcanチューハイ」は“お酒”としての味を重視する30〜40代も納得する出来だったことがヒットのポイントだったと思われる。

 販促活動としてはコンビニが導入するまでは、オピニオンリーダーに商品を送るといった地道な宣伝活動を行ってきた。ちなみにタカラcanチューハイなど宝酒造の商品はコアターゲットを絞っているため、路線広告はJR常磐線に集中させているようだ。

 認知を広げる上では、コンビニの棚に並べてもらうこと自体を一番の宣伝と考えているように思える。コンビニに対しては安定した売り上げを維持して、信頼してもらえるように注力。その信頼を勝ち取れているのは、商品の“味”を理解してもらっているコアターゲットの消費者を裏切らない品質にこだわり続けているからだろう。

著者プロフィール:笠井清志

JR東日本リテールネット・コンビニエンス営業部長。ゼネコン、コンビニチェーン本部、コンサルティング会社を経て現職。小売業・サービス業を中心に多店舗展開チェーン(特に駅ナカ・空港等の限定商圏マーケティング)を中心に活動。NEWDAYSが2007年度から3年連続で1店舗平均日商でセブン-イレブンを抜いた実績のサポートを行う。月刊コンビニ(商業界)での執筆、海外メディア「Financial Times」等取材実績多数。著書に『コンビニのしくみ』(同文館出版)や『よくわかるこれからのスーパーバイザー』(どちらも同文館出版)がある。経営相談・講演・執筆等の依頼はこちら(kiyoshi1025@gmail.com)まで。


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