腐っていない電力を、腐らせよう原口一博×武田邦彦 それでも原発は必要か(6)(2/3 ページ)

» 2011年07月13日 08時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

国は違う方向を向いている

原口一博氏

原口:話は変わりますが、『エンデの遺言――「根源からお金を問うこと」』という本をご存じでしょうか?

武田:はい。

原口:ドイツの童話作家、ミヒャエル・エンデに関する本ですが、彼は「お金を腐らさなければいけない」と言っています。そうしないと、小さな価値がいつの間にか大きな価値に考えられてしまうから。そしてお金というのは記号なので、記号だけがどんどん先行していってしまう。そうなれば貧富の格差と紛争の極大化になってしまう、と警鐘を促しています。

 1929年、世界大恐慌がありました。そして2008年にはリーマンショック。僕も、お金は腐らさなければいけないと思っています。そして電力も腐らさなければいけない。巨大化させないで、国民に戻さなければいけない。

武田:日本でも200年くらい前までは「同じ仕事だけど、給料は20万円と30万円、どちらがいいか?」と聞くと、「20万円」と答える人が多かった。ここでは分かりやすくするために「20万円か30万円か」としていますが、なぜ「20万円」と答える人が多かったのか。なぜなら「20万円」でも「30万円」でも自分の生活は変わらない、という確信があったから。自分は月に18万円しか使っていないので、30万円ももらう必要がない、という考えをもっている人が多かった。

 ところが今は、お金が“怪物”になってしまった。そして怪物になったお金が、自分の幸福をもたらすかもしれないという錯覚にとらわれてしまう。しかし自分が思った以上のお金を手にできない人が出てくるのは当然で、中にはその状態が不幸だと感じる人がいる。そして心を病んでしまったり、最悪の場合、自殺という道を選んでしまったりしている。

原口:そうですね。

武田:このようにさまざまな問題がリンクしてしまっているんですよ。原発の事故が起きたことはものすごい不幸なことですが、事故後お母さんたちの姿を見ていると、「お金持ちになりたい」とギスギスしたものを感じませんでした。むしろ「自分の子どもが健やかに育ってくれれば、それだけでいい」と願っている人が多いことが分かった。

 もちろんお母さんだけでなく、お父さんもそう思っている。親は子どもの健康を願っているのに、国は違う方向を向いている。なので親は「政治家は何をやっているの?」「子どもに放射性物質で汚染されている食べ物を食べさせたくないだけなのに。それもやってくれないの?」と、政治家に対し不信感を抱いていますね。

原口:ですね。

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