学部卒でビジネススクールへ、年配の社会人たちに教えられたこととは活躍するMBAホルダーたち(3/4 ページ)

» 2011年08月02日 12時00分 公開
[MY MBA.JP]

ケースメソッドで学んだこと

――大学を卒業してすぐにビジネススクールへ行っていかがでしたか? やっぱり社会人をやってから行ったほうが良かった?

谷本 人によると思いますね。一般論では、社会人になって問題意識が高まってから行った方が、授業で学べることは多いと思います。ただ私の場合、学部卒で行って1つ良かったのは、周りの人がほとんどが自分よりだいぶ年上の、しかも企業派遣できている人たちなんです。

 ということは、それぞれの会社できちんと選抜されてきている人たちに囲まれて、そこで初めての社会人経験ができたんですね。もちろん、ずっと下っ端でいろいろなことをやらされてはいたんですが、とにかくいろんな業界のいろんな人たちから、いろんなことを教えてもらえた。生きた教科書と言うか、そういった意味では、非常に幅広い教育をしてもらって、私としては非常に役に立ちました。

――MBAを持っているということは、いまの実ビジネスの中でどのように役立っていますか?

谷本 MBAを持っているからというよりも、それを取得する中の、ケースメソッド中心の授業というのは何をやるのかと言うと、考え方のフレームワークと言うか、最近よく言う問題解決の方法のようなことを、2年間かけて何百とやるんです。野球の1000本ノックみたいに。

 そうすると、最初のころは1つのケースを読むのに4時間くらいかかって、それから分析するのに3時間とか、毎日それを2ケースくらいやっていくんですけど、慣れてくると、まあ、手を抜いている部分もあるかもしれませんが(笑)、とにかく速くなるんです。

 問題理解力と、問題の構造化と、解決策のオプション出しが速く行えるようになるというのが、多分ケースメソッドの1つの目的だと思うんです。「明日までにこの本10冊読んでこい」とか無茶なことを言うわけです。でも、教授もそれを全部本当に読むとは思っていなくて、限られた時間の中で10冊の本に書かれているエッセンスを上手く盗む技を覚えなさいというようなことを鍛えられて、そういうのは今でも役に立っていますね。

――これからMBAを目指す人にアドバイスやメッセージをお願いします。

谷本 これはもう言い古されているんですが、MBAは別に資格でもなんでもないので、資格を取りに行くという感覚では行かないほうがいいと思います。MBAを取るということはあくまでも手段なんです。だから、なんのためにMBAを取るのかという問題意識は、間違っていてもいいから、自分なりに突きつめて考えた方がいいと思います。

 で、理想論で言えば、もしその目的が明確だったら、どのビジネススクールでもいいという話ではないと思うんですね。そうは言っても学校側が選ぶものなので、同じビジネススクールを3年連続で受け続けろとか、そこまで極端なことは思わないけど、やっぱりそれぞれのビジネススクールにはいろんな特徴があって、国内もあれば、米国や欧州にもいいビジネススクールがあるわけだから、目的に応じて行くべきだろうし、その中でもハーバードみたいにケースメソッド中心のところもあれば、シカゴみたいに講義中心なところもあって、どちらにも長所がある。そういう風にきちんと選んで行くのがいいと思います。

 それから、特に社会人から行くのであれば、やはりビジネス感覚を持って行ってほしいですね。ビジネススクールへ行くということは、当然2年の時間と、すごいお金を投資するわけです。で、それが、別にお金という意味ではなくて、きちんとリターンを得られるようにしないといけないわけで、そういう意味でも、これだけの投資をして、自分は何のリターンを得るために行くのかという明確な目的意識は持つべきでしょう。そうなれば行ったときの立ち居振る舞いも変わってくるかなと思います。

 私はビジネススクール時代に交換留学生制度を利用してペンシルバニア大学のウォートンスクールへも行ったんですが、そこへ行った時に感じたのは、企業派遣で来ている日本人の多くが、何となく、それまで頑張ったご褒美としてビジネススクールへ派遣されたという感覚を持っていたということです。もちろん派遣した会社としてはそう思っていないんだけど、本人たちがそう思っている。で、彼らはそれなりにエリートな人たちなので、エリートな過ごし方をしているわけです。つまり、高い点が取れそうなコースだけを効率的にやってソツなく点を取る、あとはゴルフをしたりして。

 で、僕はそこまでは別にいいと思うんですけど、さらに交流が、まあ、いろんな理由もあるのでしょうが、日本人だけに限られていたりするわけです。それってすごくもったいなくて、本当は向こうの人たちと侃々諤々徹夜で議論するとか、そういう経験があると、そのあと一生続いていくネットワークができるのに、そういうのがすごく希薄な人たちも少なくなかったですね。

 で、それはさっきの話に戻すと、やはりきちんとした問題意識や目的を持って行くと、もう少し有意義な過ごし方ができると思うんです。私は向こうの生活にとことん染まろうと思っていたので、ドミトリーみたいなところで米国人と部屋をシェアしていましたし、そのころのクラスメイトともいまだに連絡を取り合っています。

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