経済ニュースが、分かりにくい理由相場英雄の時事日想(2/3 ページ)

» 2011年08月25日 08時01分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

噛み砕く努力を

 先ほどから何度も国際金融市場の現状を「史上最大の危機」と触れてきたのには理由がある。今般の事象を大手メディアが伝えない方法で解説してみる。

 まずは米国債について。米国を「老舗の商家」に置き換えてみよう。

 『200年以上続く商家のしきたりは厳しい。特に金銭の管理については、同業者のみならず、出入り業者、取引先の銀行の信頼度は絶対的な安心感を維持してきた。この商家が振り出す約束手形の信頼度も高く、過去にトラブルは皆無だった(この約束手形が「米国債」)。

 だが、当代の三男坊が、曲者だった。怪しげな金融業者が持ち込んだ投資商品を大量購入した挙げ句、莫大な損失を発生させてしまったのだ。

 公営ギャンブルや株式投資程度の負けならば、従来は父親が損失を穴埋めして世間体を取り繕ってきた。しかし、今回三男坊が手を出してしまった商品は、いわく付きの投機物件だった(サブプライムローン関連商品)。

 テコの原理を利用した商品故に天文学的な損失が発生し、商家は蓄えを一気に吐き出す事態に追い込まれ、市中に出回っていた約束手形の信用度が一気に地に落ちた、という構図だ。同様に、他地域にある別の老舗(EU諸国)も投機商品で身代が揺らぎ、手形の信認が著しく低下している』――といった具合はいかがだろう。

 要するに、既存のメディアは一大事を「噛み砕いて」伝える努力をほとんどしていないのだ。ジャーナリストの池上彰氏が引っ張りだことなったのは、専門的なネタを平易に伝える術が際立って優れていたからに他ならない。

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