次の政権は、短命でいい。なぜなら藤田正美の時事日想(1/3 ページ)

» 2011年08月29日 08時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 菅首相がようやく辞任し、民主党が新しい代表を選ぶ。今回は出ないとみられていた前原誠司前外務大臣が出馬表明したことで、票読みがガラっと変わってしまった。これで前原グループを当てにしていた野田佳彦財務大臣などは目算がすっかり狂った。

 こうも首相がころころ代わる政治に、国民は飽き飽きしているだろう。しかしあえて言う。次の内閣は短命政権でいい。もともと、民主党の次期代表選まで1年、次期総選挙は遅くとも2年後だ。代表選はともかく、民主党が次の総選挙で勝つためには、相当の得点を稼がなければならないのだが、2年間でそれをやるのは難しい。

 それに、民主党は2009年総選挙時のマニフェストの一部目玉政策(子ども手当や高速道路無料化)を投げ打ってしまった。例えば子ども手当は、「社会が子どもを育てる」という理念から所得制限も付けないとしていた。自民党や公明党の「児童手当」とはそこが違うというのが民主党の主張だった。しかし菅首相辞任の道筋をつけるために、所得制限を付けてしまった。こうした理念の変更は、本来、もう一度総選挙で国民に問い直すのが筋だと思う。

 子ども手当だけではない。税と社会保障の一体改革や成長戦略、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)参加、農業再生などなど、日本の将来を大きく左右する問題について、現在の民主党がそれなりのビジョンを持っているように見えないのである。というより党内の意見はバラバラで、「挙党一致」という掛け声があまりにも空しい。

 しかもこうした重大な問題を担う首相を選ぶには、今回の代表選は告示から投票までの期間も短かすぎるし、投票できるのは国会議員だけだ。地方の議員や民主党員の声は(少なくとも間接的にしか)反映されないのである。

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