コラム
» 2011年09月13日 08時00分 公開

松田雅央の時事日想:天空にある、気象観測所を訪ねてみた (2/3)

[松田雅央,Business Media 誠]

大気の変化をデータで裏づけ

 ユングフラウヨッホ観測所は、スイス環境省の気象観測プロジェクト「NABEL(大気物質観測ネットワーク)」を構成する16観測所のひとつ。各観測所は市街地、高速道路沿い、農村、森などさまざまな条件の場所に立地し、ユングフラウヨッホ観測所はもちろん標高が一番高い。NABELでは、例えば大気中の浮遊微粒子、窒素酸化物、硫黄酸化物、炭化水素、オゾンの濃度を観測している。それに加え、高所の特色を生かした高高度の気象観測や太陽光線スペクトル観測も併せて行っている。

測定器

 ユングフラウヨッホ観測所でオゾン層を破壊する化学物質や地球温暖化の原因物質の測定が始まったのは1980年代。

 オゾン層は大気中でオゾン濃度が高い部分のことであり、地上から約10〜50キロほどの成層圏に多く存在し高度25キロで密度が最も高くなる。波長が短く特に有害な紫外線UV-Cを完全に吸収し、皮膚の炎症や皮膚ガンの原因となるUV-Bも大部分を吸収するなど、地上の動植物を保護している。

 本来、オゾンの生成と分解は成層圏で均衡を保っているのだが、人工物資が成層圏まで達するとオゾンの分解を促進してしまう。冷蔵庫やクーラーの冷媒、電子部品の洗浄に使われるフロンなど塩素を含む人工物質がその代表格だ。成層圏で活性化された塩素がオゾンを破壊するメカニズムは1970年代から報告されていたが、1985年に発表された南極上空のオゾンホール現象が世界に決定的な衝撃を与えた。1987年にはオゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書が採択され、これが世界的なフロン規制の出発点である。

 先進国では1996年からフロンの生産が禁止され、オゾン破壊効果がとりわけ大きいCFC類(例えばCFC-12)は90年代に入り増加傾向が頭打ちとなっている。一方、破壊効果が比較的低いHCFC類(例えばHCHC-22)は規制が緩く、増加傾向は変わっていない。人間の活動は地球全体の大気に影響を与えるが、有効な対策が施されれば比較的速いスピードで改善効果も期待できる。

 いずれにしても道路、住宅、工場などから遠く離れた高所観測所は、近隣の影響を受けず精度の高い大気物質の観測が可能になる。

ユングフラウヨッホにおけるCFC-12とHCHC-22の大気中濃度(1986-2004年、出典:Zwischen Himmel und Erde, Jungfraubahn)

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