天空にある、気象観測所を訪ねてみた松田雅央の時事日想(1/3 ページ)

» 2011年09月13日 08時00分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]

 海抜3580メートル、年間平均気温マイナス7.9度、0.66気圧。雪が消えることのない白銀の世界にユングフラウヨッホ/ゴルナグラート・アルプス高所観測所は建つ(参照リンク)。1922年の開設以来、欧州で最も標高の高い観測員常駐の気象観測所として貴重なデータを集め続けている。

90年の歴史

 前回ユングフラウヨッホを訪れたのは昨年5月のことだった。春は一面真っ白い雪に覆われるこの地も、8月中旬になれば岩山が地肌を現す。

 ユングフラウヨッホとはメンヒ山(海抜4107メートル)とユングフラウ山(4158メートル)の鞍部(あんぶ:尾根の中間部)を指す地名で、ユングフラウヨッホ/ゴルナグラート・アルプス高所観測所(以後、ユングフラウヨッホ観測所)はそこに建つ。本誌2010年6月15日・22日号でレポートしたように(関連記事)、ユングフラウヨッホは欧州で最も標高の高い駅(登山鉄道)があることでも知られ、世界中から年70万人の観光客が訪れる。麓の町インターラーケン(海抜588メートル)から登山鉄道3本を乗り継げば、わずか3時間で氷河を見下ろす別世界だ。

 このユングフラウヨッホ観測所は高所にあるだけでなく約90年に渡り有人で気象観測を続けてきた点でも特筆に値する。昔の観測は天候・気温・風速・風向など単純なものに限られていたが、特異な条件の下で科学的計測がこれほど長く続けられている意義は大きい。

ユングフラウヨッホ観測所(左)、ユングフラウヨッホ観測所と岩山をくり貫いて建てられた観光施設(右)

写真左はユングフラウヨッホ観測所から臨むユングフラウフィルン氷河。写真右はアイガー(左)、メンヒ(中)、ユングフラウ(右)3山の遠景。双眼鏡を使えばメンヒとユングフラウの間に建つユングフラウヨッホ観測所が視認できる

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