では、日本の就業者(非正規雇用)のうち「生計の主たる担い手」と「それ以外の人」の数はどれくらいなのでしょう?
「平成19年就業構造基本調査(速報値)」によると、現在の正規雇用者数は3432万人、パート、アルバイト、契約社員、派遣社員(大手のみ)の合計が1889万人、自営業者が670万人と経営者(役員含む)が400万人です。ここまでで就業者数の合計は6391万人となります。
非正社員雇用者合計1889万人の内わけは以下の通り。
このうち、「生計の主たる担い手ではない」と推定されるのは、「高校生、大学生、専門学校生など学生」の大半と、「59歳以下の女性で夫が有業である504万人」および「60歳以上の人」の一部でしょう。
主婦の8割が「主に夫の収入で生活している」と仮定し、高齢者の5割が「主に年金や貯蓄で生活している」と仮定すると、学生と合わせて758万人が「生計の主たる担い手ではない労働者」となります。
最も多く見積もって、「夫が有業の人は全員が、主に夫の収入で暮らしている」「60歳以上の人は全員が年金や貯蓄で主に生計を立てている」と仮定した場合は、学生を合わせて計1036万人となります。
つまり、ほかに主な家計収入があり、「時給の仕事」でも食べていける人は、最も多くても1036万人、妥当な推測では758万人に過ぎません。
反対に言えば、非正規雇用で働いている人1889万人のうち、実にその半分が「生計の主たる担い手でありながら時給の仕事で働くことを余儀なくされている人たち」だというわけです。
企業や経済団体側は「非正規雇用は、多様な働き方の提供手段である」という主張をよくしますが、この数字をみる限り、企業側の主張は詭弁と言わざるをえないでしょう。
むしろ経営者には、この1000万人近い「非正規雇用かつ生計の主な担い手である労働者」を正社員として雇えるよう、付加価値の高い仕事を創り出す責務があります。しかし、それはまったく果たされていません。
非正規雇用に端を発する低所得者問題を収入増によって解決するためには、私たちは企業に対して「自社の非正規社員の半分を正社員に転換すべし!」という、極めて高い要求を突きつけることが必要になるのですが、企業側からすれば、これはほとんど実現不可能に思える水準の要求であろうと思います。
次回の記事(10月10日掲載予定)ではこの問題の解決策について考えてみます。
兵庫県出身。バブル最盛期に証券会社で働く。米国の大学院への留学を経て外資系企業に勤務。2010年秋に退職し“働かない人生”を謳歌中。崩壊前のソビエト連邦など、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。著書に『自分のアタマで考えよう』『ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法』がある。Twitterアカウントは「@InsideCHIKIRIN」
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